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2274 ら特集10仙台弁護士会⑤24

平成19年06月29日 犯罪被害者等参加制度関連法成立に対する会長声明
ttp://senben.org/archives/466
去る6月20日、犯罪被害者および遺族(以下「犯罪被害者等」という。)の刑事手続参加制度の新設と損害賠償命令制度を含む「犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事訴訟法等の一部を改正する法律」が成立した。犯罪被害者等が刑事裁判手続に当事者として直接参加する制度は、現行の刑事訴訟の本質的な構造である検察官と被告人・弁護人との二当事者の構造を根底から変容させ、法廷を復讐の場に逆行させる大きな危険を孕むものである。また、損害賠償命令制度には、刑事事件と民事事件には、立証責任の所在などの点で重要な相違点があるにもかかわらず、刑事裁判と同一の裁判官が基本的には刑事訴訟記録に基づいて民事損害賠償の判断を行なうという重大な問題点がある。それゆえ、当会は、これまで両制度に強く反対してきたものであり、にもかかわらずこの法律が成立したことは、極めて遺憾である。この法律に重大な問題点があることは、参議院法務委員会での附帯決議が、①当事者主義の理念を前提とすること、②過度の報復感情や重罰化を招かないこと、③被告人の権利の適切な保障などに配意した公正かつ適正な運営、④実施時期が近接する裁判員制度において特に被害者参加人による量刑に係る意見については裁判員が被害者参加制度の趣旨を十分に理解することができるよう配意することを、政府及び最高裁判所に対して求めていることからも明らかである。当会は、本年2月の定期総会で反対の決議を行い、また、衆議院通過の際にも反対の声明を発表したところであるが、あらためて、今回の犯罪被害者等参加制度関連法の成立を受け、被告人に憲法上保障された権利の実現のために、上記附帯決議が指摘する運用の徹底と制度の問題点の不断の見直しを求めていく決意である。
2007(平成19)年6月29日仙台弁護士会 会長 角山正

平成19年06月13日 犯罪被害者の刑事参加手続に反対する会長声明
ttp://senben.org/archives/468
犯罪被害者の刑事参加手続に反対する会長声明
 当会は,本年2月24日の定期総会において,被害者参加人制度及び付帯私訴制度は現行刑事裁判制度の根幹を揺るがすものであり,その導入は断じて容認することができないので,政府に対し,このような制度を含む刑事訴訟法の改正案を国会に提出しないように求めるとともに,国会にも上記改正案を成立させないよう強く求めることを決議した。しかし,衆議院は,本年6月1日,被害者の刑事手続参加制度の新設を含む「犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事訴訟法等の一部を改正する法律案」を可決し,参議院に送付した。衆議院での可決に先立ち,本年5月29日の衆議院法務委員会における参考人質疑においても,被害者の遺族の立場にある二人の参考人が,この法案に対して賛成と反対という異なる意見を陳述し,研究者である二人の参考人も大きく異なる見解を述べている。このように,国民の中で意見が分かれているにもかかわらず,衆議院法務委員会においては,このように,十分な審議が尽くされず,法案が採決されるに至ったものである。本法案の参加制度においては,犯罪被害者等は,検察官とは別個の当事者の立場で,証人や被告人に尋問したり,求刑意見を述べたりすることができ,そこに報復感情が影響してくることは否定できない。また,被告人・弁護人は検察官だけでなく,犯罪被害者等とも対峙しなければならず,被告人の防御権の行使にとって負担が加重となることは避け難い。以上のように,本法案は刑事裁判の現場に多大な悪影響を及ぼすことが明らかであることから,参議院に対し,上記改正案を成立させないよう,改めて強く求める次第である。
2007(平成19)年6月13日仙台弁護士会会長角山 正

平成19年05月16日 憲法改正手続法の抜本的見直しを求める会長声明
ttp://senben.org/archives/470
本年5月14日、憲法改正手続法が、参議院本会議において可決成立した。当会は、国民主権主義などの憲法の基本原理を尊重する見地から、また硬性憲法の趣旨からも、憲法改正手続法案に対し、最低投票率の定めがないことをはじめ、公務員及び教員の投票運動を禁止していること、憲法改正の発議後投票日14日前までの有料意見広告を可能にしていること、発議後投票日までの期間が短すぎること等、多くの重大な問題点があることを指摘してきた。また、当会は、参議院での慎重審議を尽くすよう強く要請してきた。にもかかわらず、法案は、上記の問題点が何ら解消されないままに、極めて短い期間で、広く国民的論議が尽くされることなく可決成立してしまった。同法が可決される際、最低投票率制度の意義・是非について検討することを含む18項目にも亘る附帯決議がなされたことは、同法が多くの重大な問題点を残し、かつ、十分な審議を経ていないことを如実に示すものである。国民主権にかかわる最重要の法案が、国民の意思を十分に汲み取ったとは言えない拙速な審議によって成立してしまったことは誠に遺憾である。憲法改正手続法の国民投票に関する規定の施行は公布から3年後とされた。当会としては、国会に対し、この3年の間に、附帯決議がなされた事項にとどまらず、憲法改正権者は国民であるという視点にたち、あらためて国民投票に真に国民の意思を反映することができるような法律にするべく、同法の抜本的な見直しがなされることを強く要請する。
2007(平成19)年5月16日仙台弁護士会 会長 角山 正

平成19年04月27日 イラク特措法の2年間延長法案に反対し、自衛隊の即時撤退及びイラク特措法の廃止を求める会長声明
ttp://senben.org/archives/472
政府は、2007(平成19)年3月30日、時限立法として制定され本年8月1日で失効する「イラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法」(以下「イラク特措法」という。)を2年間延長する同法改正案を国会に上程した。当会は、自衛隊のイラク派遣に関して、これまで「イラク特別措置法案に対する会長声明」(2003年7月16日付け)、「自衛隊のイラク派遣に反対する会長声明」(同年12月18日付け)、「自衛隊のイラク即時撤退を求める会長声明」(2004年4月12日付け)、「自衛隊のイラク派遣延長反対・即時撤退並びにイラク特別措置法の廃止を求める会長声明」(2004年11月17日付け)及び「自衛隊のイラク派遣再延長に反対し、即時撤退及び『イラク特措法』の廃止を求める会長声明」(2005年11月17日付け)をそれぞれ発表し、自衛隊イラク派遣が自衛隊の武力行使を事実上容認し、また米英軍を中心とする占領軍及び主権移譲後の多国籍軍の武力行使と一体化するものであって、憲法前文及び9条に違反するおそれが極めて高いこと、自衛隊が駐留していたサマワも迫撃砲が撃ち込まれるなど「非戦闘地域」とは言えずイラク特措法にも違反していることを指摘してきた。そもそも、自衛隊のイラク派遣は米英によるイラク侵攻に端を発するものであるが、そのイラク侵攻は国連安保理決議もなく、自衛行為でもないので、国連憲章に違反していることは明らかである。しかもこの間、イラク侵攻の大義名分とされてきた大量破壊兵器の存在及び旧フセイン政権と国際テロ組織アルカイダとの結びつきまでもが、いずれも虚偽情報であったことが明らかとなった。このような状況の中、当初占領軍や多国籍軍に加わっていたスペイン、オランダ、及びイタリア等18カ国が既にイラクから撤退し、デンマークやリトアニアも撤退を表明し、さらにはイギリスも派兵規模を半減すると表明している。アメリカにおいても、イラク駐留米軍の撤退期限を上院では2008(平成20)年3月末まで、下院では同年8月末までとする法案を可決している。しかるに、政府は、2006(平成18)年7月17日に陸上自衛隊をサマワから撤退させたものの、航空自衛隊及び海上自衛隊の派遣を継続し、航空自衛隊についてはその活動地域をバグダッド等に拡大させている。既にイラク全土が内戦状態にあると言われている中で、航空自衛隊機が離発着するバグダッド及びその近郊は、とりわけテロや戦闘が続く激戦地であり、「非戦闘地域」であるとはおよそ認められない。従って航空自衛隊の活動拡大は、イラク特措法違反と言わざるを得ない。また、航空自衛隊の活動内容も、政府はその全容を明らかにしていないものの「武器を携行している米兵」(2004年4月8日津曲義満航空幕僚長記者会見)や「多国籍軍の軍人、兵士等」(2005年3月14日参議院予算委員会大野防衛庁長官答弁)を輸送しており、多国籍軍のための輸送支援であることは否定できない。これらの輸送支援は、「人道復興支援活動」ないし「安全確保支援活動」とは言えず多国籍軍の武力行使と一体化するものであって憲法前文及び9条に違反する疑いが極めて濃厚である。加えて、多国籍軍の中心をなす米軍は、これまで対テロ作戦と称してイラク各地で幾度となく掃討作戦を繰り返してきたが、その戦闘に巻き込まれて多くのイラク一般市民が死傷している。このような状況下で、イラク特措法を延長し、自衛隊のイラク派遣を継続することは、武力によらない平和を希求し、全世界の人々の平和的生存権を確認する日本国憲法の恒久平和主義に反するとともに、現地で活動する自衛隊員の安全を著しく脅かすものである。にもかかわらず、政府は国民に対して、イラクに派遣されている自衛隊の活動実態を十分説明することもないままに、時限立法たるイラク特措法の延長法案を成立させようとしている。よって、当会は、日本国憲法の恒久平和主義に背く政府の姿勢に対して抗議するとともに、イラク特措法の延長に反対し、自衛隊の即時撤退及びイラク特措法の廃止を強く求める。
2007年(平成19年)4月27日仙台弁護士会  会長 角山 正

平成19年04月25日 憲法改正手続法案(国民投票法案)に反対し参議院での慎重審議を求める緊急会長声明
ttp://senben.org/archives/476
与党は、2007年(平成19年)4月13日、衆議院本会議において日本国憲法の改正手続に関する法案(いわゆる国民投票法案)を強行採決した。与党は参議院においても5月3日までに本会議採決を目指しているとされる。しかし、同法案には、国民に対する中立公正な情報提供、自由かつ十分な投票運動の保障、投票結果への国民意思の正確な反映等の観点から重大な疑義が存在する。これらの問題点については既に2006年(平成18年)7月7日の東北弁護士会連合会大会決議、同年8月22日付け日本弁護士連合会意見書、当会の2007年(平成19年)2月24日の総会決議において指摘されているところである。憲法96条1項の「国民の承認にはその過半数の賛成を必要とする」の意味については諸説があるが、憲法が、憲法改正について国民の承認という特別の手続を定めたのは、憲法改正は主権者である国民自らの意思によらなければならないという国民主権原理に基づく。そして国民自らの意思による改正と言えるためには、少なくとも改正に賛成する票が白票や無効票を含む全投票総数の過半数を超えたときに国民の承認があったものとされるべきである。しかしこのように解したとしても最低投票率の制度を設けなければ、投票率が低い場合、投票権者の少数の賛成で憲法改正が可能となってしまうが、それでは国民自らの意思による憲法改正とは到底評価できない。従って国民自らの意思による憲法改正と言えるためには一定の最低投票率の定めが不可欠である。もっとも最低投票率の定めについては、憲法がそれに言及していない以上そのような制度を設けることは憲法に違反するとの見解もある。しかし、最低投票率の制度は、最低投票率にも達しないような投票結果では真に国民自らの意思とは評価できないので「国民の承認あり」とすべきでないとの考えに基づくものである。従って最低投票率の定めはむしろ憲法96条1項の要求するところであって、条文が最低投票率に言及していないとの一事で憲法に違反すると考えることは妥当でない。そして最近の世論調査によれば、最低投票率の定めが必要とする意見は79%にも達している。また昨日仙台市で開催された参議院地方公聴会においても、公述人は最低投票率の定めは絶対に必要との考えを述べている。しかるに与党案は最低投票率の定めを欠いている。与党案については、それ以外にも、公務員及び教員の投票運動を禁止していること、憲法改正の発議後投票日14日前までの有料意見広告を可能にしていること、発議後投票日までの期間が短すぎること等重大な問題点が指摘されている。ところが与党は衆議院において、拙速審議との強い批判にもかかわらず与党単独での強行採決を行った。そして今また参議院送付後僅か2週間程度で再び強行採決を目指している。主権者たる国民の意思が正確に反映されるよう万全を期すべき国民投票法案についてかかる拙速な審議がなされることは誠に由々しき事態と言わねばならない。当会は、我が国の在り方の根幹に関わる国民投票法案が、上記の重大な問題を残したままで制定されることに断固反対である。参議院においては、さらに全国各地で公聴会を開催するなど国民の意思を十分に汲み取り、良識の府にふさわしい慎重な審議を尽くすよう強く求めるものである。
2007年(平成19年)4月25日仙台弁護士会 会長 角山 正

平成19年02月24日 国選弁護報酬・費用の大幅増額と予算措置を求める決議
ttp://senben.org/archives/480
1 憲法37条3項は,被告人に国選弁護人を付する義務を国に課している。また,被疑者の弁護人依頼権は憲法上保障されているが,貧困等のため弁護人を依頼できない被疑者に対しては,憲法と国際人権法の諸規定に鑑み,国が弁護人を付す責務を負っているというべきであり,平成18年10月から実施された被疑者国選弁護制度も,こうした憲法上の要請を受けて定められたものである。このような憲法上の要請を受けて活動する国選弁護人の職責は極めて重いものであり,国は国選弁護人に対してその職責に応じた適切な報酬と実費を支払うべきである。しかるに,国は,これまで国選弁護人報酬額を極めて低額な報酬にとどめ置いてきたばかりか,記録謄写料,交通費等の実費を原則として支給しなかった。これは,国選弁護人制度の実施にあたり,被告人の権利擁護のために努力する弁護士の犠牲的活動に依存し,国の経済的負担を不当に回避してきたものと言わざるを得ない。このような視点から,当会はこれまで,二度にわたる会長声明において国選弁護報酬の引き下げに厳重に抗議するとともに,適正な報酬額にするよう求めてきた。
 2 このような経過の下において,平成18年5月に定められた日本司法支援センターの「国選弁護人の事務に関する契約約款」に基づく国選弁護報酬及び費用(以下「新算定基準」という。)は,以下のとおり,極めて低額に据え置かれてきた報酬額をさらに減額したばかりでなく,加算基準の内容において極めて不合理な点があり到底容認できない。まず,被告人国選弁護の基礎報酬は,これまでの報酬額を更に下回るもので低廉に過ぎる。次に,被疑者国選弁護の報酬は,接見回数に2万円を乗じた金額(但し初回接見2万4000円)となっている。そもそも,被疑者弁護活動は接見に尽きるものではなく,事実調査を行なったり,自白強要等不当な取調べを阻止したり,家族との意思疎通を図ることで社会復帰に向けての環境を整備したり,示談を進めたり,また被疑事実及び情状について検察官に意見を述べるなどの様々な活動を含む。従って,接見回数のみによって報酬額を決定することに合理性がないことは明らかであり,別途基礎報酬を設定する必要がある。また,新算定基準によれば,報酬の特別成果加算として,示談成立が挙げられているものの,犯罪事実すべてについて示談が成立しなければ全く加算されないこととなっている。しかし,一部についての示談であったとしても,その成立のため弁護人が一定の活動をした結果,執行猶予や減刑の可能性が高まるのが通常であることからすると,このような成果を特別加算の対象とすべきは当然である。更に,被疑者弁護における起訴猶予,嫌疑不十分・嫌疑なしによる不起訴処分,被告人弁護における執行猶予や無罪及び保釈等の獲得に対する特別成果加算が認められていない。しかし,これらの結果は,弁護人が被疑者等に有利な情状,被疑者等と犯罪事実とのつながりを否定する事情や当該行為が犯罪を構成しない理由,また保釈を認めるべき相当な事情等を検察官や裁判所に対して主張した結果であることが通常であり,類型的に見れば,まさに弁護人の諸活動の成果であることは明らかであって,このような成果を特別成果加算の対象とすべきは当然である。実費についても,新算定基準によれば往復100キロメートル未満では弁護活動のための交通費の支払はなされず,200枚以内の謄写枚数に対して記録謄写料の支払さえなされないこととなっている。しかし,弁護活動に必要な実費さえ支給しないことは,低額な国選弁護報酬をさらに実質的に削減することを意味し,到底容認できない。
 1 平成21年には,被疑者国選弁護の対象が必要的弁護事件に拡大し,国選弁護制度を支えるために弁護士はさらなる経済的犠牲を求められ,前述した問題点が一層その深刻さを増すことは明らかである。そこで,当会は,持続可能性のある国選弁護制度の確立のためには制度を支える弁護士に対して適切な報酬及び費用が支払われるべきであるという視点から,日本司法支援センターに対しては,国選弁護報酬・費用の大幅増額及び合理的な加算基準を求めるとともに,国に対しては上記増額のために必要な予算措置を求める次第である。以上のとおり,決議する。
平成19年(2007年)2月24日仙台弁護士会会長  氏  家  和  男

平成19年02月24日 犯罪被害者参加人制度及び付帯私訴制度導入に強く反対する決議
ttp://senben.org/archives/478
犯罪被害者参加人制度及び付帯私訴制度導入に強く反対する決議
 1 法制審議会は,平成19年2月7日,被害者参加人制度及び付帯私訴制度を柱とする要綱を決定した。これを受けて政府は,今国会に法案を提出する構えである。しかし,上記両制度は,現行刑事裁判制度の根幹を揺るがすものであり,その導入は断じて容認することができない。
 2 被害者参加人制度は,故意に人を死傷させた事件等について,犯罪被害者や遺族(以下,「被害者等」という。)に,在廷することを認めた上で被告人に質問し,証人に対しては情状に関する内容について質問し,そして検察官の論告求刑後,独自に論告求刑をするなどの権限を付与するものであり,「参加人」と称しつつも,まぎれもなく訴訟当事者としての地位を認めるものである。しかし,近代刑事司法制度においては,私的復讐が公的刑罰に昇華された結果,国家と被告人が対立当事者として予定されることとなり,ここに私人としての被害者等が当事者として加わることは,法廷を復讐の場に逆行させる大きな危険を孕むものである。いうまでもなく,被告人は,有罪判決が確定するまでは無罪と推定されなければならない。被害者等が刑事裁判に当事者として参加することは,当該被告人が犯人であることが前提となっており,無罪推定の原則が侵害される結果となる。本制度が導入されるときには,被告人が,被害者等から怒りや悲しみなどを前面に出した質問を直接に受けることになり,時には供述したいことを控えざるを得なくなるなど防御活動を萎縮させる可能性が極めて高い。また,被害者が在廷すること,及び直接に質問又は論告求刑を行うことは,特に平成21年に実施される予定の裁判員裁判においては,裁判員の情緒に強く働きかける結果,証拠に基づいて冷静になされるべき事実認定について不当な影響を与える危険性も強い。更に,被害者等の直接関与により,検察官の訴追活動と異なる被害者等の訴訟活動が行われれば,検察官の訴追方針との不整合が生じ得ることは容易に予想されるところであり,被告人は,それら全てに対して防御することを余儀なくされ,防御すべき対象が拡大することとなり,被告人の防御を著しく困難にする。
 3 付帯私訴制度は,有罪判決言渡直後に,刑事事件と同一の裁判官が引き続き刑事裁判で認定した事実や,刑事記録を証拠として,被告人に対する損害賠償額を決定するというものである。しかし,そもそも,同制度は起訴後何時でも付帯私訴申立書を提出することが許されているため,同申立書記載内容が証拠法則の吟味を受けずに裁判所が目にすることを意味し,まさに証拠裁判主義に反し,ひいては予断排除,無罪推定原則にも抵触する。特にこの弊害は,刑事裁判についての経験に乏しい裁判員による裁判において顕著であるといわざるをえない。また,そもそも刑事事件と民事事件には,立証責任の所在や自白法則等,重要な相違点がある。刑事裁判に引き続き損害賠償命令を出せるとすることは,刑事裁判と民事裁判との相違点を無視することを意味する。更に,この制度においては,被告人及び弁護人としては,過失相殺など損害賠償請求についての審理で争点となると予測される事項を強く意識して審理に対応せざるを得なくなり,刑事訴訟が遅延するとともに,争うこと自体が量刑上不利な情状として考慮されるおそれを感じることで,十分な防御権の行使ができなくなる恐れもある。
 2 以上述べてきたとおり,両制度には大きな問題点があり,これを導入することは到底容認できないので,当会は,政府に対し,このような制度を含む刑事訴訟法の改正案を国会に提出しないように求めるとともに,国会にも上記改正案を成立させないよう強く求める次第である。以上のとおり,決議する。
平成19年(2007年)2月24日仙台弁護士会 会長 氏家 和男

平成19年02月24日 憲法改正国民投票法制定に反対する決議 〜特に最低投票率の定めのない法案に反対する〜
ttp://senben.org/archives/484
平成18年5月26日,自民・公明の与党及び民主党は,それぞれ憲法改正に必要な手続を定める国民投票法案を衆議院に提出し,平成19年1月25日に始まった通常国会における重要法案として審議がなされている。いうまでもなく,憲法改正国民投票は,主権者である国民が国の最高法規である憲法のあり方について意思を表明するという国政上の重大問題であり,中立公正な情報提供,自由かつ十分な投票運動の保障,投票結果への国民の意思の正確な反映等が不可欠である。しかし,上記両法案には,中立公平が期待できない広報,国民投票運動の広範な制限,少数の賛成で承認とされる恐れ等の重要な問題点が多々含まれている。それらの問題点については,東北弁護士会連合会の平成18年7月7日の大会決議や日本弁護士連合会の同年8月22日付け意見書などで指摘されており,その後の国会での審議などで改善が検討されているものもある。しかるに,国民投票を有効とする条件としての最低投票率の定めについては,与党及び民主党は導入しないという考えであり,議論すらほとんどなされていない。現行憲法は,人権尊重主義,国民主権及び平和主義を掲げ,広く国民に浸透・支持されてきた国の最高法規である。憲法改正とは,このような現行憲法を積極的に変更しようとする行為であり,国民と国家に多大な影響を与えるものである。それゆえ憲法自身改正が容易になされないよう厳格な改正手続を定めている。よって,憲法改正には国民の多数がこれを是として現状を変更する旨の意思を明白かつ積極的に表明することが必要と考えるべきである。ところが,最低投票率の定めが導入されなければ,例えば投票率40%の場合には投票権者の20%超程度の賛成で足りることになり,投票権者のほんの少数の賛成により憲法が改正される恐れがある。このように投票権者の3分の1にも満たない少数の賛成で憲法改正が承認されるのは,改正憲法の正当性・信頼性に疑義が生じ極めて不当と言わざるを得ない。そのため,日本弁護士連合会も前記の意見書で憲法改正の重要性や硬性憲法とされている趣旨からして少なくとも3分の2以上の最低投票率を定めるべきであるとの意見を発表している。当会も少なくとも3分の2以上の最低投票率を定めることを強く求めるものである 憲法改正を目的とした国民投票法を制定すること自体の是非をめぐっては議論が存するところであるが,昨今の国会情勢からして,東北弁護士会連合会の前記決議で指摘した問題点が解消されないまま,また,最低投票率の定めについては議論もないまま,国民投票法が近日中に成立してしまう恐れが強くなっている。そこで,当会は,前記決議で指摘した問題点が解消されないまま国民投票法を制定することに反対するとともに,とりわけ最低投票率の定めのない国民投票法案に強く反対するものである。以上決議する。

平成19年(2007年)2月24日仙台弁護士会 会長 氏家 和男

平成18年11月16日 教育基本法改正に反対する緊急声明
ttp://senben.org/archives/487
これまで当会は2回にわたり、教育基本法改正反対の会長声明を発表し、本年5月18日には、改正法案についてほとんど非公開のうちに議論が進められたこと、改正の必要性について全く検証もなされていないこと、また、内容的にも、憲法に則り「個人の価値」を最大限尊重することを目的とした現行法に比べ「公共の精神」を養う目的を加えることで、その理念を後退させたばかりか、愛国心教育を目標と定めて内心の自由を保障する憲法19条に抵触するおそれがあることなどをその重大な問題点として強く反対した。 しかるに、今国会に提出された改正法案においては、上記問題点が全く解消されていないばかりか、近時のマスコミ報道により、教育基本法改正にあたっての民意の反映の過程自体にも重大な問題点を孕むことが明らかとなっている。すなわち、政府は市民と政府の相互対話の場としてタウンミーティングを開催し、教育基本法改正問題についてもタウンミーティングを通じて民意を反映したかのごとき体裁を整えてきた。しかし、政府は、タウンミーティング実施に際して、質問事項を地元教育委員会に送るなどして教育基本法改正に賛成する「やらせ」発言をさせたことなどが明らかになった。更に、近時は政府が、賛成意見を述べる者に対して謝礼を渡していたという事実も判明し、加えて主催者において政府側の意を受け、改正に反対する参加者を意図的に排除したという疑惑も生じている。いうまでもなく、教育基本法は、憲法と同様に、その基本において名宛人は国家であり、教育の根本規範として、子どもが自由かつ独立の人格として成長するために必要な理念と基本原則を明らかにしたものであって、準憲法的・立憲主義的な性格を有するものである。教育基本法の改正は、このような教育基本法の性格に鑑み、通常の法律以上に慎重でなければならないし、その内容について十分な国民的合意が必要なものと言わなければならない。にもかかわらず、上記の通り、民意を聞く場におけるやらせ発言によりいわば世論を偽装し、政府の求める方向に世論を恣意的に誘導しようとする姿勢は、民主主義の根幹を揺るがすものとして厳しく断罪されなければならない。NHKの最新のアンケートでは、改正に賛成する者は全体の4割に過ぎず、しかも、賛成するものの中でも、その7割は拙速な改正には反対しているという。また、東京大学による全国の小中学校校長に対するアンケートによれば約7割近くが改正に反対しており、宮城県でも元公立小中学校校長19名が連名で改正に反対を表明している。更に、仙台市において11月8日に開催された地方公聴会においても、国民的議論と合意が必要であると慎重審議を求める声が多かった。一方、現在、教育にまつわる重大な問題が噴出している。いうまでもなく、一つには陰湿なイジメの問題や虐められた子どもの自殺の問題、そしてその連鎖の問題であり、もう一つには学習指導要領により必修とされた科目を意図的且つ組織的に履修させないということが広く行われていたという問題である。今、社会が緊急に求められていることはまさにこれらの諸問題の原因の探求と対策であり、これらの検証作業が行われること抜きに、不適切な方法による世論の誘導の中で教育基本法の改正が行われることは断じて容認できない。しかし、与党は、去る11月15日、衆議院の教育基本法特別委員会において野党欠席のまま単独採決を行い、更に11月16日、衆議院本会議においても野党欠席のまま単独採決を強行した。ここに当会は、あまりにも民意を無視したかかる衆議院の審議のあり方に断固抗議するとともに、参議院においては衆議院における実質的な審理がなされなかった法案として速やかに廃案とすることを強く求めるものである。
18年(2006年)11月16日仙台弁護士会会長氏家 和男

平成18年10月03日 平成18年10月3日会長声明
ttp://senben.org/archives/489
平成18年8月15日、山形県鶴岡市にある加藤紘一衆議院議員の実家と地元事務所が放火されるという事件が発生し、9月19日、右翼団体の構成員であったとされるこの事件の被疑者が現住建造物放火罪と住居侵入罪で山形地方裁判所に起訴された。報道によれば、被告人は、加藤紘一議員が小泉前総理大臣の靖国神社参拝への積極的な姿勢について批判する意見を表明していたことについて強い不満を抱き、放火に及んだとのことである。靖国神社への首相参拝を巡っては、これまでも昨年1月、参拝に反対する発言をした財界関係者の自宅に火炎瓶が置かれ、実弾が郵送されるという事件が発生し、また、本年7月にも昭和天皇が靖国神社のA級戦犯合祀に不快感を示す発言をしていたとされるメモをスク?プした新聞社に対して火炎瓶が投げられるなどの事件が発生しており、今般の放火事件も、これらの事件と同様、自己と政治的意見が異なる者への言論封殺のための暴力行為であることは明らかである。いうまでもなく民主主義は、広く国民に多様な価値観、意見の違いがあることを前提に、自由な言論を通じて民意を形成していく過程にその本質があり、その意味で言論の自由の保障はまさに民主主義の根幹をなすものである。異なる政治的意見を持つ者に対して、放火という生命、身体、財産に対するいわば極限的な侵害行為をなすことによりその言論を封殺しようとすることは、ひとり当該政治家の言論の自由の侵害にとどまるものではなく、これにより他の政治家や他団体、更には国民一般の言論の自由に対する著しい萎縮的効果を与えるものであり、まさに民主主義社会を根底から否定しようとする蛮行と言わざるを得ない。当会は、基本的人権の擁護と社会正義の実現を使命とする法律家の団体として、言論の自由が保障され、いかなる意見や価値観も自由に表明しうる民主主義社会の重要性を改めて広く市民に訴えるとともに、自由な言論を萎縮させるあらゆる暴力行為を許さない社会を創るため全力を尽くす決意であることをここに表明するものである。
平成18年(2006年)10月3日仙台弁護士会 会長 氏 家 和 男

平成18年05月18日 共謀罪の新設に反対する会長声明
ttp://senben.org/archives/501
2006(平成18)年5月現在、衆議院において、共謀罪新設を含む「犯罪の国際化及び組織化並びに情報処理の高度化に対処するための刑法等の一部を改正する法律案」の審議がなされている。
 当会は、昨年度までに2度にわたり、この共謀罪の新設に反対する会長声明を出した。与党は法案審議の過程で、当初の政府法案を修正する法案を提出した。しかし、この与党修正案をもってしても、当会が上記の会長声明で指摘した問題点は解決されていない。このまま立法がなされるときには市民の思想・信条の自由が侵害され、ひいては情報伝達や情報発信という自由な活動に対する萎縮効果が見込まれ、これを看過することは到底できない。まず、上記政府法案及び与党修正案の最大の問題点は、犯罪の共謀があっただけで犯罪が成立することである。現行刑法では、共謀段階で犯罪が成立するのは、内乱罪・外患罪のみであり、きわめて重大な犯罪に限定されているが、政府法案及び与党修正案では615もの犯罪について、共謀を行っただけで犯罪が成立することとになる。しかも、共謀のみによって共謀罪の成立を認めるということは、犯罪の抽象的な危険の存否すら不明な段階であっても、犯罪に関する会話や通信をしたことだけで犯罪が成立するとされる虞がある。例えば、マンション建設反対運動の話し合いをしただけで、威力業務妨害共謀罪に当たるとして逮捕される可能性があるのである。また、政府法案及び与党修正案では、共謀とは犯罪実現の意思を通じることとされており、構成要件として抽象的であり明確性を欠いている。かかる抽象的、不明確な構成要件の共謀罪の捜査においては、特定の行為だけで構成要件該当性を認定することができないため、市民の思想、信条まで捜査対象となり国民の思想信条を侵害する虞がある。さらに、共謀の事実の捜査の名のもとに捜査機関が市民の一般的な会話を傍受したり、電話や電子メールのやり取りを監視する事態も予想される。このような捜査方法が認められるならば、市民の情報伝達や情報発信という自由な活動が萎縮することは避けられない。結局、共謀罪を新設し、615もの犯罪について、その共謀のみをもって犯罪の成立を認めるということは、思想信条の自由を侵害し、民主主義を支える市民間の自由な情報の流通、とりわけ表現の自由に対する重大な脅威となるものであり、到底容認することはできない。よって、当会は、あらためて、上記政府法案及び与党修正案に対し、強く反対することを表明するものである。
2006(平成18)年5月18日仙台弁護士会会長 氏 家 和 男

平成18年05月18日 教育基本法の「改正」に反対する会長声明
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1 去る4月28日、教育基本法の全部を改正する法案(以下「本法案」という)が国会に提出された。
2 本法案については、法案化に至る過程において、十分な議論が行われたとは言い難く、法改正の手続に重大な問題がある。本法案の元になった「教育基本法に盛り込むべき項目と内容について(最終報告)」は、2003年6月に設置された「与党教育基本法改正に関する協議会」及びその下の「検討会」において、通算70回にわたる精力的な議論を積み重ねたうえで取りまとめられたものとされるが、この間、2004年6月に中間報告が公表されたことを除いては、全て非公開にて議論が進められており、国民に向けて開かれた議論が行われたとは言い難い。「教育の憲法」とも言われる教育基本法の改正の在り方としては極めて不適切である。
3 今回の改正については、その立法事実についても重大な疑問がある。「与党教育基本法改正に関する協議会」の設置に先立つ2003年3月、中央教育審議会が作成した答申においては、「教育の現状と課題」として、「いじめ、不登校、中途退学、学級崩壊などの深刻な問題が依然として存在」することが指摘され、そのような「危機的状況を打破し、新しい時代にふさわしい教育を実現するために」改正が必要であるとされている。本法案は上記答申を受けたものであるが、上記答申後本法案提出までの間、上記答申が指摘するような教育現場の問題が教育基本法の欠陥によるものであることの検証は全くなされていない。
4 本法案は、現行教育基本法が第1条において教育の目的として掲げていた「個人の価値をたっとび」の文言を削除し、かえってその前文において、「公共の精神を尊び、豊かな人間性と創造性を備えた人間の育成を期するとともに、伝統を承継し、新しい文化の創造を目指す教育を推進すること」を謳い、教育の目標として、「公共の精神に基づき、主体的に社会の形成に参画し、その発展に寄与する態度を養うこと」を明記している。これは、個人の尊厳を重んじる憲法の精神に則り、「個人の価値」を最大限尊重することを教育の目的に据えた現行教育基本法の理念を、「公共の精神」を養う目的のもとで後退させるものであり、極めて問題というほかない。子どもの権利条約29条第1項aは、教育が子どもの成長発達権を支援するために行われるべきであるという理念を普遍的な教育目的として掲げているが、本法案が規定する上記の教育目標はこのような教育についての世界の到達点にも反するものである。
5 また、本法案は、「伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛する(中略)態度を養うこと」を教育の目標として据えている。上記答申においては、「国を愛する心をはぐくむ」と表現されており、表現内容に若干の変容が見られるが、その実質において変わりはなく、公教育の場における愛国心教育を推進する内容となっている。しかし、国を愛するか否かを含め、国を愛する心情の内容は、個人の内心の自由に属する問題であり、国が介入し管理・支配してはならない領域である。公教育の場で「国を愛する」ことが当然であると教えることは、内心の自由を保障する憲法19条に抵触するおそれがある。さらに、現行教育基本法は、明治憲法下の「愛国心」教育が軍国主義という国策のための教育となりこのことが戦争の惨禍の一因となったことを反省し、平和国家建設の決意により誕生したものであるが、「国を愛する態度」を養う教育が行われるとすれば、正に時代の流れに逆行するものである。
 3 以上のとおり、本法案は、法案化の手続において著しく拙速であるとともに、その内容においても重大な問題をはらんでいると言わざるを得ない。当会は、「愛国心」教育の名の下に本来の教育が歪められ、国家に有為で従順な人間作りの目的で営まれることに強い危惧を表明し、本法案に基づく教育基本法の「改正」に反対する。
2006年5月18日仙台弁護士会会長 氏家 和男

平成18年05月18日 未決拘禁法案の修正等を求める会長声明
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本年4月14日,「刑事施設及び受刑者の処遇等に関する法律の一部を改正する法律案」(いわゆる未決拘禁法案。以下、「本法案」という。)が衆議院法務委員会の附帯決議をつけ衆議院を可決成立し,参議院に送付された。しかし,本法案には次のような問題点があり,参議院においては修正等がなされることを求める。
* 1 法制審議会は1980年に,「関係当局は,将来,できる限り被勾留者の必要に応じることができるよう,刑事施設の増設及び収容能力の増強に努めて,被勾留者を刑事留置場に収容する例を漸次少なくすること」(漸減条項)という答申を全会一致で採択した。しかしながら,本法案は,上記答申と異なり、「都道府県警察に留置施設を設置する」(14条)として,法律で初めて警察留置場の設置根拠を認め,さらに,この警察留置場に本来刑事施設に収容すべき被勾留者を「刑事施設に収容することに代えて,留置施設に留置することができる」(15条1項)ことを認めるに至っている。この点に関し,衆議院は上記附帯決議において,「昭和五十五年に法制審議会から『関係当局は、将来、できる限り被勾留者の収容の必要に応じることができるよう、刑事施設の増設及び収容能力の増強に努めて、被拘留者を刑事留置場に収容する例を漸次少なくすること。』との答申がなされたが、現在、刑事収容施設の過剰拘禁問題の解決が、当時に比しても、喫緊の議題となっており、その実現に向けて、関係当局は更なる努力を怠らないこと。」とし,警察留置場漸減の点に触れてはいるが,代用監獄の弊害に言及せずに過剰拘禁問題との関連で述べるにとどまっていて,不十分のそしりを免れない。以上のとおり,本法案は,代用監獄廃止,漸減の方向性すら明示しておらず極めて遺憾である。
* 2 捜査と拘禁の分離は国際人権(自由権)規約(9条)の求めるところであり,国際人権(自由権)規約委員会も,警察内部での分離では不十分とし,代用監獄の廃止を勧告している(1993年,1998年)。
*  この点に関し,警察庁は1980年,捜査部門と留置部門を分離したと弁明しているが,それ以降でも代用監獄での自白強要,人権侵害事例は後を絶たず,代用監獄の弊害は現在でも解消されていない。これは宮城県内においても例外ではない。例えば,仙台地方裁判所平成13年4月24日判決は、酒に酔っていて事実経過を覚えていない被告人について、誘導のもと自白調書が作成された事案であるが,捜査関係者は被告人が犯行に関与しているとの嫌疑を有しており,自白供述を内容とする上申書が作成されていたが,これは,警部補が鉛筆で下書きしたものについて被告人にボールペンでなぞらせて作成したものであった。判決は,自白を裏付ける客観証拠の欠如,供述の変遷,説明の不自然さ,動機や犯行自体についての迫真性の欠如などを丁寧に認定した上で,自白の信用性を否定したものである。この事件は佐沼警察署での取調中のものであり,全国的にも今なお,代用監獄での人権侵害事例が数多く報告されている。
*  このような代用監獄の弊害からして,参議院は,1980年に法制審議会において採択された前記答申の歴史的事実をふまえ,「拘置所の収容能力の増強に努めて,代用監獄に収容される例を漸次少なくする」との漸減条項を法案の附則として盛り込むか,または,代用監獄の規定を廃止すべきである。
* 3 本法案は,「留置施設の規律及び秩序を害する行為」をするときは,面会の相手方が弁護人等の場合であっても職員による面会の一時停止を認めている(219条1項)。しかし、このような規定は刑事施設法案にもなかった規定であり,しかも、弁護人との秘密交通権に対する干渉に当たるものであるから、このような抽象的理由で弁護人との面会が停止されるようなことはあってはならないのである。したがって、当会は弁護人との面会の停止を定める当該条項が修正されることを求める。*  以上のとおり,本法案には代用監獄の漸減条項が盛り込まれていないなど,種々問題を有するものであるから,当会は今後とも,代用監獄の漸減,廃止と未決拘禁制度の抜本的改革を求めて引き続き粘り強く運動を続ける決意である。
2006(平成18)年5月18日仙台弁護士会会長氏家和男