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2302 ら特集富山県弁護士会②

組織犯罪処罰法の改定(いわゆる共謀罪の新設)に反対する声明
政府は3月21日、組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律(組織犯罪処罰法)の改定法案を国会に上程し、「テロリズム集団その他の組織的犯罪集団による実行準備行為を伴う重大犯罪の遂行の計画」を処罰するものとしていわゆる共謀罪を新設しようとしている。報道によれば、この改定法案が成立した場合に新設される共謀罪は277に上るという。
 共謀罪法案は、過去に3度国会に上程されたが、広範な世論の反対により3度とも廃案となったものである。
 政府は、我が国が締結しているいわゆる国際組織犯罪防止条約を批准するためには共謀罪新設が必要不可欠であり、また、2020年開催の東京オリンピック・パラリンピックでのテロを防止する対策として共謀罪が必要だと説明している。しかし、国際組織犯罪防止条約は本来、組織的経済犯罪の防止を主旨とするものであってテロ対策を目的とするものではなく、この条約を批准する上で共謀罪が必要不可欠ではないことは、過去の共謀罪法案の審議の中で明らかになっている。また、我が国は国連のテロ関連条約の全てに加盟し、テロ対策に必要な国内法整備を既に終えているうえ、殺人予備罪や凶器準備集合罪等々により重大な犯罪について未遂以前の段階から処罰できる体制を整えているのであり、テロ対策目的での共謀罪新設の立法事実は認め難い。
さらに政府は、処罰対象を「テロリズム集団その他の組織的犯罪集団」に限定し、また、犯罪遂行の計画に加えて実行準備行為が要件になっているとして、過去の共謀罪法案とは異なるとしきりに強調する。しかし、正当な活動を行っていた団体も結合の目的が犯罪を実行する団体に一変したと認められる場合は「組織的犯罪集団」に該当するものとされるが、そうした一変があったか否かはひとえに捜査機関の判断にかかっている。また、実行準備行為の要件にしても、資金の手配や下見等々、危険性の乏しい中立的な行為であっても「準備行為」と判断される。したがって、処罰対象を絞り、あるいは捜査機関の権限濫用を防止するために要件が加重されたとは到底言えず、過去の共謀罪法案とその本質は何ら変わっていない。
 そもそも我が国の刑事法の体系は、法益侵害に向けられた具体的な危険性がある行為を処罰することを原則としており、未遂犯の処罰は例外であり、より前段階である予備罪や陰謀・共謀罪は重大な犯罪について極めて例外的に処罰することとしている。これは、かつて行われた国家の恣意的な刑罰権行使による人権侵害を排除し、刑事法の人権保障機能を十全に果たすための基本原則である。今般政府が新設しようとする共謀罪は、この基本原則を根底から覆すものである。
 共謀罪法案が成立したときには、捜査機関は、団体・組織の日常活動をいわば大手を振って査察できることになろう。共謀罪の立件にはどんな計画・目的を持っていたか内心の探求が必須であるから、「自白」の強要や盗聴捜査が横行し、スパイ潜入捜査等も行われ、プライバシー侵害と監視の中で市民の自由な活動が萎縮することは必定である。
そして、共謀罪は、その成立要件がきわめて曖昧であるため、捜査機関の恣意的な解釈・運用を許すものとならざるを得ない。捜査機関が摘発したい団体・組織を狙い撃ちし、共謀罪を口実に構成員を逮捕・捜索することによってその団体・組織にダメージを与えて活動を阻害し、その結果、結社の自由、表現の自由はもとより、思想信条の自由という内心の自由をも侵害することが強く懸念される。戦前、この共謀罪とまさに本質を同じくする治安維持法のいわゆる目的遂行罪が濫用され、当県では世に「泊事件」と呼ばれる冤罪事件が生まれたことを決して忘れてはならない。よって、当会は、今般政府が行おうとしている組織犯罪処罰法の改定(いわゆる共謀罪の新設)に強く反対し、国会がこの法案を速やかに廃案にするよう求めるものである。
2017(平成29)年3月23日
富山県弁護士会 会長  山  本  一  三

司法試験合格者数のさらなる減員を求める17弁護士会会長共同声明
1. 日本弁護士連合会は,本年3月の臨時総会決議(以下,「日弁連臨時総会決議」という。)において,現行の法曹養成制度の下で,法曹志望者が毎年大幅な減少を続けており,こうした状況が続くなら我が国の司法と民主主義を担う人的基盤を脅かす危険があるとし,平成27年度司法試験合格者数が1850人であった状況の中で,「まず,司法試験合格者数を早期に年間1500人とすること」を,可及的速やかに実現すべき緊急の課題として,全国の会員・弁護士会と力を合わせて取り組むことを表明した。
2. 制度発足後,現実の法的需要を大幅に超える2000人前後の合格者(法曹有資格者)が毎年供給される反面,裁判所の新受件数に現れているとおり,法曹に対する従来型の需要は増加するどころか近年減少を続け,新しい活動領域の拡充も,供給の増加を吸収する規模には至らなかったため,有資格者の過剰供給の弊害は年々顕在化してきた。
 司法試験を合格し,司法修習を終了しても,法曹として就職・就業できない者が12月の一括登録時で400人を超え,その1ヶ月後でも200人を超えているという異常事態が,平成23年12月(一括登録時464人,1ヶ月後326人)から昨年(一括登録時468人,1ヶ月後225人)まで続いてきた。また,新人法曹が抱える貸与型奨学金や修習中の貸与資金は,利用者平均で350万円にのぼることも判明している。
 こうした中で,法曹の魅力,司法試験の魅力は,年々確実かつ急速に失われてきた。その結果として,法科大学院適性試験の受験者数は,試験が開始された平成15年には5万4千人であったものが,昨年3621人,本年3286人にまで激減し,司法試験受験者も,平成16年には4万3千人であったものが,昨年は8016人となり,さらに本年は6899人にまで激減するに至っている。現状は,法曹志望者の減少傾向に歯止めが利かなくなっている状態にあり,政府の法曹養成制度検討会議が平成25年6月26日取りまとめで指摘した,「多様で有為な人材を法曹に確保することが困難となる危機」は,現実化するに至っている。
 多様で有為な人材が法曹を志望せず,試験の選抜機能が働かず,就職環境や法曹に就いた後のOJTの環境も厳しいとなれば,新規法曹の質が低下することも必定である。
 日弁連臨時総会決議が,昨年の1850人の現状に対し,まず1500人へと合格者数を減員することを緊急課題としたのも,現行の法曹養成制度がこのような深刻な危機の状態にあるとの認識を反映したものである。
3. 法務省は,本年9月に,本年度の司法試験合格者数は1583人であると発表した。数字だけを見ると,日弁連総会決議が緊急課題とした1500人への減員に結果として近づいたともいえる。しかし,昨年度も本年度も受験者数に対する合格者数の割合(合格率)は同一の23%であるから,本年度の合格者の減少は,昨年度と比べ法曹志望者が大幅に減少した結果もたらされたという見方をする意見もあり,政策的な減員がなされたか否か明らかでない状況にある。
 日弁連臨時総会決議は,「更なる減員については法曹養成制度の成熟度や現実の法的需要,問題点の改善状況を検証しつつ対処していくべきもの」としているところ,現行の法曹養成制度は,法曹志望者の激減に合わせて,法科大学院適性試験や司法試験の受験者が上記の通り著しく激減した結果,制度の成熟の前提となる多様で有為な人材の確保そのものが危機に瀕する実態にある。また,現実の法的需要が,平成15年以降,倍近くに増えた法曹有資格者の過剰供給を吸収できる状態から程遠い実態にあり,そのことの弊害がますます顕在化していることも,すでに明瞭である。
この間に,法曹有資格者が,既に何年にもわたり,登録年度ごとに供給過多が発生し,そのもとで法曹界に様々な困難が積み重なっていることを考慮すれば,政府が,次年度以降に向け,さらに大幅な減員を行う方針を速やかに採用しなければ,供給過剰による弊害の進行を食い止めることはできず,社会に法曹界の魅力ある将来像を提示することは困難となり,結果として人材の法曹離れの傾向を止めることもおぼつかず,さらに法曹養成制度の危機を深めるという悪循環が繰り返されることになる。
4. 法曹は司法を担う人的基盤であって,司法制度は法の支配と人権擁護の基盤となる国家制度である。いま,供給過剰による弊害の進行を食い止め,法曹を目指すことの魅力を保持することは,司法制度存立の基礎を維持するために不可欠な事柄である。そこで,われわれは,共同で,政府に対し,次年度以降の司法試験合格者数を,さらに大幅に減員する方針を,速やかに採用することを強く求めるものである。以 上
2016年(平成28年)12月27日
埼玉弁護士会  会 長  福 地 輝 久
千葉県弁護士会 会 長  山 村 清 治
栃木県弁護士会 会 長  室 井 淳 男
群馬弁護士会  会 長  小此木   清
山梨県弁護士会 会 長  松 本 成 輔
長野県弁護士会 会 長  柳 澤 修 嗣
兵庫県弁護士会 会 長  米 田 耕 士
三重弁護士会  会 長  内 田 典 夫
富山県弁護士会 会 長  山 本 一 三
山口県弁護士会 会 長  中 村 友次郎
大分県弁護士会 会 長  須 賀 陽 二
仙台弁護士会  会 長  小野寺 友 宏
福島県弁護士会 会 長  新 開 文 雄
山形県弁護士会 会 長  山 川   孝
秋田弁護士会  会 長  外 山 奈央子
青森県弁護士会 会 長  竹 本 真 紀
札幌弁護士会  会 長  愛 須 一 史

死刑執行に対する会長声明
2016年3月25日、大阪拘置所及び福岡拘置所において各1名に対して死刑が執行された。岩城光英法務大臣による2015年12月18日以来2度目の死刑執行であり、第2次安倍内閣以降、死刑が執行されたのは9回目で、合わせて16人になる。
 当会は、2016年1月28日、死刑執行に関する会長声明を発表し、死刑執行に対し強く抗議するとともに、死刑執行を停止した上で、死刑制度の存廃についての国民的議論を深めるために死刑に関する情報を広く国民に公開することを政府に求めた。また、日本弁護士連合会は、2015年12月9日に、岩城法務大臣に対し、「死刑制度の廃止について全社会的議論を開始し、死刑の執行を停止するとともに、死刑えん罪事件を未然に防ぐ措置を緊急に講じることを求める要請書」を提出して、死刑制度とその運用に関する情報を広く公開し、死刑制度に関する世界の情勢について調査の上、調査結果と議論に基づき、今後の死刑制度の在り方について結論を出すこと、そのような議論が尽くされるまでの間、すべての死刑の執行を停止すること等を求めていた。2014年3月、静岡地方裁判所が袴田巖氏の第二次再審請求事件について、再審を開始し、死刑及び拘置の執行を停止する決定をした。現在、東京高等裁判所において即時抗告審が行われているが、もし死刑の執行がなされていたならば、まさに取り返しのつかない事態となっていた。袴田氏は48年ぶりに釈放されたが、その心身に不調を来しており、袴田事件は、えん罪の恐ろしさはもちろんのこと、死刑制度の問題点を浮き彫りにしている。
 死刑の廃止は国際的な趨勢であり、世界で死刑を廃止または停止している国は140か国に上っている。死刑を存置している国は58か国であるが、2014年に実際に死刑を執行した国は更に少なく、日本を含め22か国であった。いわゆる先進国グループであるOECD(経済協力開発機構)加盟国(34か国)の中で死刑制度を存置している国は、日本・韓国・米国の3か国のみであるが、韓国は17年以上にわたって死刑の執行を停止、米国の19州は死刑を廃止しており、死刑を国家として統一して執行しているのは日本のみである。こうした状況を受け、国際人権(自由権)規約委員会は、2014年、日本政府に対し、死刑の廃止について十分に考慮すること等を勧告している。
 当会は、これまでの死刑執行に対して抗議してきたところであるが、今回の死刑執行に対し強く抗議するとともに、死刑執行を停止した上で、死刑制度の存廃についての国民的議論を深めるために死刑に関する情報を広く国民に公開することを改めて求める。
2016(平成28)年5月26日
富山県弁護士会 会長 山 本 一 三

夫婦同氏の強制及び再婚禁止期間についての最高裁判所大法廷判決を受けて民法における差別的規定の改正を求める会長声明
 1. 2015年(平成27年)12月16日、最高裁判所大法廷は、夫婦同氏の強制を定める民法第750条は憲法第13条、同第14条、同第24条のいずれにも違反するものではないと判断した。
その理由としては、婚姻の際の「氏の変更を強制されない自由」は憲法上保障されていないこと、夫婦同氏の強制それ自体に男女間の形式的な不平等が存在するわけではないこと、などが挙げられている。
2. しかしながら、かねて日本弁護士連合会が「選択的夫婦別姓制導入並びに非嫡出子差別撤廃の民法改正に関する決議」(1996年10月25日)において指摘したとおり、民法第750条は、憲法第13条及び同第24条が保障する個人の尊厳、同第24条及び同第13条が保障する婚姻の自由、同第14条及び同第24条が保障する平等権を侵害している。
 また、民法第750条は、我が国が1985年(昭和60年)に批准した女性差別撤廃条約の第16条第1項(b)が保障する「自由かつ完全な合意のみにより婚姻をする同一の権利」及び同項(g)が保障する「夫及び妻の同一の個人的権利(姓及び職業を選択する権利を含む。)」にも反するものである。
3. 今回の最高裁大法廷判決においても、5名の裁判官(3名の女性裁判官全員を含む。)が、民法第750条は憲法第24条に違反するとの意見を述べた。
そのうち岡部喜代子裁判官の意見(櫻井龍子裁判官、鬼丸かおる裁判官及び山浦善樹裁判官が同調)は、夫婦同氏の強制によって個人識別機能に対する支障や自己喪失感等の負担がほぼ妻に生じていることを指摘し、その要因として、女性の社会的経済的な立場の弱さや家庭生活における立場の弱さと、事実上の圧力など様々なものがあることに触れた上で、夫婦同氏の強制が個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚した制度とはいえないと説示している。
 この点、多数意見(全て男性の裁判官)は、夫婦同氏の強制が合理性を欠くとは認められないとか、いわゆる通称使用の広まりで氏の変更の不利益は「一定程度は緩和され得る」などと説示している。しかしながら、問題となる合理性とは、夫婦が同氏であることの合理性ではなく、夫婦が別の氏を称することを全く認めないことの合理性であると捉えるべきであろう。また、木内道祥裁判官の意見にあるとおり、法制化されない通称では、それを許容するか否かの判断を相手方に委ねざるをえず、通称を使用すること自体、決して容易ではないのが実情である。
4. ところで、法制審議会は、1996年(平成8年)に「民法の一部を改正する法律案要綱」を総会で決定し、男女とも婚姻適齢を満18歳とすること、女性の再婚禁止期間の短縮及び選択的夫婦別姓制度の導入を答申していた。
 また、国連の自由権規約委員会は、婚姻年齢に男女の差を設ける民法第731条及び女性のみに再婚禁止期間を定める民法第733条について、女性差別撤廃委員会は、これらの規定に加えて夫婦同氏を強制する民法第750条について、それぞれ、日本政府に対し改正するよう重ねて勧告を行ってきた。
 法制審議会の答申から19年、女性差別撤廃条約の批准から30年が経つにもかかわらず、国会は、上記各規定を放置してきたものである。今回の最高裁大法廷判決における山浦善樹裁判官の反対意見も、1996年(平成8年)の法制審議会の答申以降相当期間を経過した時点において、民法第750条が憲法の諸規定に違反することが国会にとっても明白になっていたと指摘している。
 今回の最高裁大法廷判決における多数意見も、自らの判断が選択的夫婦別氏制度に「合理性がないと断ずるものではない」ことをあえて明らかにしている上、寺田逸郎裁判官も補足意見において「これを国民的議論、すなわち民主主義的なプロセスに委ねること」が相当である旨を説示しているところであり、この問題についての議論を事実上国に促したものと考えられる。そこで、国会は直ちに夫婦別氏制度の導入について改めて議論をなすべきである。
5. 一方、上記同日、最高裁判所大法廷は、女性のみに6か月の再婚禁止期間を定める民法第733条について、100日を超えて再婚禁止期間を設ける部分は合理性を欠いた過剰な制約を課すものとして、憲法第14条第1項及び同第24条第2項に違反するとの判断を下した。
この点、民法第733条を違憲であるとした点については一定の評価ができる。しかしながら、DNA検査技術の進歩により生物学上の父子関係を科学的かつ客観的に明らかにすることができるようになった現在においては、血統の混乱防止という立法目的を達成するための手段として、再婚禁止期間を設ける必要性は完全に失われているというべきであり、100日を超えない期間についても、女性にのみ再婚禁止期間を存続させる理由はない。
6. よって、当会は、国に対し、民法第750条及び同第733条並びにこれらの規定とともに法制審議会にて改正が答申され、国連の各委員会から勧告がなされている同第731条(婚姻適齢)も速やかに改正することを強く求める。
2016年(平成28年)3月28日 
富山県弁護士会 会長 水谷 敏彦