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2325 ら特集新潟弁護士会⑤

新潟県弁護士会
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死刑執行に関する会長声明
本年7月28日、東京拘置所において2名の死刑確定者に対する死刑が執行された。
死刑が執行されたのは、昨年7月以来1年ぶりのことであり、民主党政権に政権交代してから初めての死刑執行である。今回死刑執行を命じ、執行にも自ら立ち会った千葉景子法務大臣は、昨年9月の就任会見においては、「死刑の存廃、終身刑の導入の議論もある。広い国民的議論をふまえ、道を見出したい」旨発言し、死刑の執行に慎重な姿勢を示し、死刑制度の見直しを示唆していたにもかかわらず、国民的議論を行うこともなく、死刑執行がなされたことは誠に遺憾である。
当会は、2009年(平成21年)5月20日の定期総会決議において、「生命の尊厳」を尊重しなければならないという立場から、「裁判員裁判施行にあたり多数決による死刑評決に反対し、死刑制度の見直しを求める」決議を採択し、(1)裁判員裁判における死刑「評決」にあたっては全員一致の評議結果にいたるまで慎重な量刑評議をすること、(2)政府・法務省に対し、死刑制度を取り巻く捜査、公判、執行に至る全過程における問題点について、早急に改善のための具体策を明らかにすること、(3)国会に対し、死刑制度調査会を設置して死刑廃止を含めた死刑制度に関する検討を行い、その間、法務大臣による死刑執行を一時停止する法律を速やかに審議、制定することを求めた。
また、本年3月、いわゆる足利事件の再審公判において、宇都宮地方裁判所は、菅谷利和氏に対して、無罪を言い渡したが、このことは重大事件において今なお冤罪が存することを明らかにしたものであり、既に死刑が執行された者の中にも同様のケースがあるのではないかとの懸念が高まっている。
千葉法務大臣は、死刑執行後の記者会見において、今後、東京拘置所の刑場を報道機関に公開し、法務省内に死刑執行を考える勉強会を立ち上げる意向を示した。これらの提案は、死刑執行に先立って行われるべきものであり、今回の千葉法務大臣の死刑執行はその順序を明らかに誤るものである。当該勉強会が、法務省内の議論にとどまらず、真に開かれた国民的議論の場になることを求めるものである。
よって、当会は、「生命の尊厳」を最大限尊重しなければならないという立場から、あらためて、国会及び政府に対し、裁判員裁判制度のあり方も踏まえながら死刑制度に対する国内外からの問題点の指摘を真摯に受け止め、死刑廃止を含めた死刑制度に関する国民的議論を行うこと、その間、死刑執行を一時停止するよう、重ねて強く求めるものである。以上
2010年(平成22年)8月10日
新潟県弁護士会 会長 遠藤 達雄

取調べの全面可視化の早期実現を求める決議
2009(平成21)年5月21日、わが国の刑事司法のあり方を根本的に変革させる裁判員制度が施行された。
他方で、日本弁護士連合会、当会を含む各地の弁護士会ほかの市民団体が声を大にして求めてきた取調べ全過程の録音・録画(全面可視化)は、いまだに実現されていない。
当会は、密室での取調べが時として違法不当な取調べを生み、虚偽自白の誘発、冤罪の発生という許されざる事態を現実に引き起こしていること、罪のない者が処罰されるという最大の人権侵害を見逃すことはできないことから、2008(平成20)年2月29日の臨時総会において、被疑者・被告人の人権擁護や裁判員裁判の適正な実施のために、裁判員裁判実施までに全面可視化が実現されることを強く求める旨を決議した。
その後に密室での強圧的な取調べにより虚偽自白が得られたことが判明した、いわゆる布川事件、足利事件といった冤罪事件の存在によっても、全面可視化の必要性は裏付けられる。足利事件の再審公判で検事による取調べの録音テープが再生されたことは、虚偽自白に依拠した冤罪の防止や自白の任意性・信用性の判断にとって可視化が有効かつ不可欠であること、もっとも、取調べ過程の一部だけの可視化では不十分であり全面可視化が必要であることを如実に示したものというべきである。私たちも、日々の弁護活動の中で違法不当な取調べに関する主張を認めてもらえないことを経験しており、真実解明のための全面可視化の必要性を実感するところである。
この間、可視化実現をマニフェストに掲げる民主党を中核とする政権の発足や、可視化実現を目指す議員連盟の発足等により、その実現可能性は格段に高まってはいる。しかし、他方で、政府内に今通常国会への取調べの可視化法案(刑事訴訟法改正法案)提出を見合わせる動きがあることは、極めて遺憾である。
当会は、これまでにも上記総会決議をはじめ様々な取り組みを行ってきたところであるが、引き続き取調べの全面可視化の実現のために全力を尽くす決意を新たにするとともに、政府に対しては取調べ可視化法案を今通常国会に一刻も早く提出することを、国会に対しては同法案を早期に可決成立させることを各求め、取調べの全面可視化を早期に実現するよう強く求める。
2010(平成22)年2月26日
新潟県弁護士会臨時総会

身柄全件国選付添人制度の早期実現を求める会長声明
少年は、わが国の未来を支える礎石である。
他方で、少年は、社会・学校・家庭における様々な矛盾にさらされる弱い存在でもある。それ故に、結果として少年が非行を犯した場合、大人が様々な立場からその更生のために尽力すべきである。
また、少年は、心身ともに未成熟であり、自己を防御する能力も未だ不十分である。そこで、少年が非行を犯したとして逮捕・勾留等され、被疑者として捜査機関から取調べを受ける捜査段階はもとより、その後事件が家庭裁判所に送致され、少年審判手続に移行した後においても、大人にも増して充実した法的支援が必要とされるのは当然である。
しかし、現行少年法では、少年審判手続において、国の責任により選任され少年の立場を擁護する国選付添人は、検察官関与決定や被害者等による傍聴申出がなされた事件で必要的に選任されるほかは、殺人、強盗等の一定の重大事件につき裁判所の裁量で極めて限定的に選任されるにすぎない。さらに、2009(平成21)年5月より、捜査段階における被疑者国選弁護制度の対象事件が窃盗や傷害等のいわゆる必要的弁護事件にまで拡大された結果、捜査段階では少年に国選弁護人が選任されても、少年審判段階では国選付添人が選任されない事態が生じている。
このような現行制度に鑑み、当会は、2004(平成16)年12月、観護措置により身柄を拘束され、かつ、検察官により少年院送致以上の処遇意見が付された少年に対し、弁護士会の基金からの援助により付添人に就任する弁護士を派遣する「当番付添人制度」を開始し、2009(平成21)年10月からは、対象を観護措置により身柄を拘束された全ての少年に拡大した。このような「当番付添人制度」は、全国の弁護士会に広がりつつある。
しかし、少年の健全育成は、本来、国の責務である。国は、少年の健全育成を目的とする少年審判手続において、少年に対する適正手続保障のためにその責任を果たすべきである。
よって、当会は、現行の「当番付添人制度」の下で少年の権利を擁護する付添人活動に全力を尽くす決意を改めて表明するとともに、国に対し、現行少年法を改正し、少なくとも、観護措置により身柄を拘束された全ての少年について、国の責任で、国費により弁護士付添人を選任する制度を早急に実現するよう求める。
2010(平成22)年2月2日
新潟県弁護士会 会長 和田 光弘

葛飾ビラ配布事件に関する会長声明
2009年11月30日、最高裁判所第二小法廷は、東京都葛飾区内のマンションで政党の政治的意見等を記載したビラを配布していた行為が住居侵入罪に当たるとした東京高等裁判所判決に対する上告について、被告人の上告を棄却する判決を言渡した。
しかし、本件で処罰対象となった政治的意見をビラで配布するという行為は、マスメディアを直接利用することが困難な市民にとって、自らの意見を直接かつ確実に市民に伝達するための極めて重要な手段であり、かつ、戸別に配布されたビラを受領することによって市民はマスメディア等では報道されない情報を得ることができるという点においても極めて重要な意義を有している。戸別のビラ配布行為は市民による政治的意思表明や政治的活動を支えるために必要不可欠な表現行為の一つであり、それに対する規制は必要かつ最小限のものでなければならない。
ところが、本件において、最高裁は、表現の自由の重要性について言及しながらも、「たとえ表現の自由の行使のためとは言っても、そこに管理組合の意思に反して立ち入ることは、本件管理組合の管理権を侵害するのみならず、そこで私的生活を営む者の私生活の平穏を侵害するものといわざるを得ない。」と述べ、本件行為に対し刑罰を科すことは憲法21条1項に違反しないとした。
しかし、そこには、管理組合の管理権の性格や位置づけ、保護法益の範囲や重要性に関する精密な比較検討が行われていない。
管理権が政治的意思形成過程を支えるものとして特に重要とされる表現の自由と同等な法益として取り扱ってよいのか、本件ビラ配布行為によって管理権がどの程度侵害されたのか、また、私生活の平穏が具体的にどの程度侵害されたのか、それらは政治的意思表明を背景とする表現の自由を規制してまでも保護しなければならないものであるのかなどについて、厳密に検討した形跡は認められない。
新潟県弁護士会は、最高裁判所が表現の自由の重要性、とりわけ戸別のビラ配布が国民の政治的意思形成に果たす役割、並びに、表現の自由の規制に際して自らが憲法の番人として厳密な検証を行うべき職責を有しているという認識について危惧の念を持たざるを得ない。
最高裁は2008年4月11日にも政治ビラの戸別配布を処罰することについて本件と同様に憲法21条に違反しないとする判断を示していたが、日本における政治ビラの戸別配布に対する規制に対しては、国際人権(自由権)規約委員会が2008年10月、「政府に対する批判的な内容のビラを私人の郵便受けに配布したことに対して、住居侵入罪もしくは国家公務員法に基づいて、政治活動家や公務員が逮捕され、起訴されたという報告に懸念を有する」旨の表明をし、日本政府に対し、「表現の自由に対するあらゆる不合理な制限を撤廃すべきである」と勧告するなど、国際社会から厳しく批判されていたところである。また、日本弁護士連合会は、2009年11月6日に開催した人権擁護大会において、裁判所に対し、「憲法の番人として市民の表現の自由に対する規制が必要最小限度であるかにつき厳格に審査すること」を求める宣言を採択したところであった。本判決は、これら国内外の意見を無視したものであり、表現の自由に対する不当な規制を後押しする大変問題のある判決であると言わざるを得ない。
当会は、最高裁に対し、表現の自由の重要性と憲法の番人として自らの職責をあらためて認識し、表現の自由が問題となる事件については、その重要性を十分に考慮して判断することを強く求める。 以上
2010年1月14日
新潟県弁護士会 会長 和田 光弘

民主党政権発足にあたって 会長談話
本日、衆参両議院において、民主党党首鳩山由紀夫氏が首班指名されたことにより、民主党政権が発足することとなりました。
新潟県弁護士会会長としては、民主党政権において、マニフェスト記載の各政策が、実現されることを強く期待します。
とりわけ、刑事裁判における捜査段階の取調べ可視化は、裁判員裁判が始まっている現段階では、焦眉の課題であり、政権による早急な取り組みを期待します。
また、消費者行政も、消費者の目線に立った行政の実現のため、当会が会長声明を発している人事の適正化も含め、十分な対応をされるよう期待しています。
さらには、裁判員裁判の量刑評議(とりわけ死刑評議の全員一致)が慎重に行なわれるよう決議した当会決議についても考慮されるとともに、国際的な人権選択議定書の批准を視野に入れた死刑制度の見直しをぜひとも検討されるよう再度求め、新政権にも、新潟弁護士会の総会決議を送付したいと思います。
民主党政権がこれら国民・市民の人権に行き届いた政策を実行されることを期待して、会長談話とします。以上
2009年9月16日
新潟弁護士会 会長 和田光弘

消費者庁長官及び消費者委員会の人事に関する会長声明
2009年(平成21年)5月29日、消費者庁関連3法が成立し、消費者庁が設立されることとなった。
消費者庁及び消費者委員会の設立は、従来の産業優先の行政から、消費者、生活者のための行政への転換をはかる、画期的なものであり、当会としても、消費者の権利を尊重し、消費者が安全で豊かな生活を営むことができる社会の実現に向けて、これら機関が果たすべき役割が極めて大きいものとして、その活動に大いに期待するところである。
しかし、法や組織が作られても、これを担う地位に就く者に設立の経緯・趣旨を理解した適切な人材が選任されなければ、消費者の権利の擁護が推進されず、法を制定し、組織を作った意義は失われるものである。
そこで、当会は、政府に対し、以下のとおり要請する。
(1) 消費者庁長官、消費者委員会委員の選任にあたっては、消費者の権利擁護の観点から、消費者問題に精通し、消費者の目線に立って権限を行使できる者、消費者問題に消費者の権利擁護の立場から真摯に取組んできた者を選任すべきであり、そのためには、日本弁護士連合会や消費者団体と十分に協議したうえで選任すること。
(2) 消費者委員長の選任については、消費者庁及び消費者委員会設置法に規定されているとおり(同法12条)、委員の自由な意思に基づく互選によらなければならず、これに政府が介入しないこと。 以上
2009年8月4日
新潟県弁護士会 会長 和田 光弘

死刑執行に関する会長声明
本年7月28日、大阪拘置所において2名、東京拘置所において1名、合計3名の死刑確定者に対する死刑が執行された。
当会は、本年5月20日の定期総会において、「生命の尊厳」を尊重しなければならないという立場から、「裁判員裁判施行にあたり多数決による死刑評決に反対し、死刑制度の見直しを求める」決議を採択し、(1)裁判員裁判における死刑「評決」にあたっては全員一致の評議結果にいたるまで慎重な量刑評議をすること、(2)政府・法務省に対し、死刑制度を取り巻く捜査、公判、執行に至る全過程における問題点について、早急に改善のための具体策を明らかにすること、(3)国会に対し、死刑制度調査会を設置して死刑廃止を含めた死刑制度に関する検討を行い、その間、法務大臣による死刑執行を一時停止する法律を速やかに審議、制定することを求めた。
ところが、政府・法務省は、死刑制度を取り巻く問題点に対する具体的な改善を何らとることもなく、今回3名に対して死刑を執行した。当会は、「生命の尊厳」を最大限尊重しなければならないという立場から、あらためて、国会及び政府に対し、死刑制度に対する国内外からの問題点の指摘を真摯に受け止め、早急に改善するよう求めるとともに、死刑廃止を含めた死刑制度に関する検討を行ない、その間、死刑執行を一時停止するよう重ねて強く求める。 以上
2009年8月4日
新潟県弁護士会 会長 和田 光弘

海賊対処法に反対する会長声明
第171回通常国会に提出されていた「海賊行為の処罰及び海賊行為への対処に関する法律」案は、6月19日参議院で否決されたが、同日、衆議院の特別多数決で再可決され法律として成立した(以下「海賊対処法」という。)。この海賊対処法は、日本国憲法に違反するおそれがきわめて強いものである。
海賊対処法は、海賊行為に対して海上保安庁が対処するだけでなく、自衛隊に対して、活動地域や保護対象となる船舶について何らの限定を加えることなく、公海上で、すべての国籍の船舶に対する海賊行為に対処し、かつ、一定の場合には武器使用まで行うことを認めた。しかも、同法は、緊急な事態に対処するための特別措置法ではなく、恒久的な対応法として位置づけられている。同法は、領海の公共秩序を維持する目的の範囲(自衛隊法3条1項)を遙かに超えて、自衛隊の活動地域を全世界の公海にまで拡張し、一定の場合には、自衛隊に武器使用まで行うことを可能にするものである。日本国憲法は、恒久平和主義の精神に立ち、第9条において武力による威嚇又は武力の行使を放棄しているのであり、自衛隊の海外活動に対しては憲法上制約が課されていると解されるところ、海賊対処法は、この憲法上の重大な制約に違反するおそれがきわめて大きい。
また、海賊対処法では、武器使用の要件が、「他に手段がないと信ずるに足りる相当な理由」(同法6条)など、きわめて曖昧な規定であり、恣意的な判断のもとに安易に武器使用がなされる危険性を否定できない。
さらに、同法は、防衛大臣が内閣総理大臣の承認を得て、自衛隊の海外対処行動の判断を行うものとし、国会へは事後的な報告で足りるとされるのであり、国会は承認機関ですらない。それだけでなく、同法は、急を要するときには、防衛大臣が必要となる行動の概要を内閣総理大臣に通知すれば足りるとし、内閣総理大臣の承認すらも不要としている。これらも国民主権、民主的統制を不当に軽視するものである点で、決して看過できない重大な問題である。
海賊行為は、深刻な国際問題であり、現在の海賊行為が行われているソマリア沖の問題について、わが国を含めた国際協力が必要である。しかし、国際紛争を解決する手段として武力を放棄し、恒久平和主義を宣言した日本国憲法の下、わが国が海賊対策としてなすべきことは、日本国憲法が宣言する恒久平和主義の精神にのっとり、無政府状態を原因とする貧困状態の解消に向けた支援活動など、非軍事的国際協力である。
当会は、日本国憲法を尊重し、擁護する立場から、海賊対処法を執行することなく、速やかにその廃止の手続を執るよう要請する。
2009年(平成21年)7月21日
新潟県弁護士会 会長 和田 光弘

裁判員裁判施行にあたり 多数決による死刑評決に反対し、死刑制度の見直しを求める決議
1 憲法第13条は、「生命」に対する国民の権利について、国政上、最大の尊重を必要とすることを規定している。かつて最高裁判所は、「生命は尊貴である。一人の生命は、全地球よりも重い。」とし、人間存在の根元である「生命」が、いったん失われれば二度と戻らないことを示し、われわれ一人一人の想いを、あらためて「生命ある人間そのものの尊厳」に立ち返らせた。
2 「死刑」は「生命」を奪う究極の刑罰である。裁判員裁判においては、一般市民も、裁判官とともに死刑を科するか否かの判断に直面し、死刑を科するには些かの誤謬も許されないという葛藤に向き合わなければならない。「死刑」は、一人の人間の「生命」を断ち切り、社会から完全に排除するという、他の自由刑等の刑罰とはおよそ異質な刑罰であるうえ、現在の死刑制度を取り巻く、捜査、公判、執行の過程には、誤判のおそれをはじめ、量刑基準の曖昧さ、執行停止制度の不備など多くの問題が存する。このことは、市民的及び政治的権利に関する国際規約第6条に基づく国連機関による近時の勧告(死刑執行停止・廃止)からも明らかである。
3 われわれ新潟県弁護士会は、基本的人権の擁護と社会正義を実現するとの使命に基づき、「生命ある人間そのものの尊厳」を重視する立場から、以下のとおり、意思を表明する。
(1) 当会は、平成21年5月21日から裁判員裁判制度が実施されるにあたり、裁判員の参加する刑事裁判に関する法律(平成16年5月28日法律第63号)第67条が「死刑」についても多数決評決としていることに反対するとともに、死刑評決を行わざるを得ない場合、裁判員裁判体は「死刑」が「生命」を奪う究極の刑罰であることを真摯に受けとめ、「死刑」評決にあたっては、全員一致の評議結果に至るまで慎重な量刑評議をする必要があるものと考える。
(2) そのうえで、当会は、政府・法務省に対し、あらためて死刑制度を取り巻く、捜査、公判、執行に至る全過程において、国内外から指摘を受けている問題点に対し、早急に、改善のための具体策を明らかにすることを求める。
(3) さらに、当会は、国会に対し、日本弁護士連合会が提唱しているとおり、「死刑制度調査会」設置による死刑廃止も含めた検討を行うことと、その間、法務大臣による死刑の執行を一時的に停止する法律をすみやかに審議し、制定することを求める。 以上
平成21年5月20日
新潟県弁護士会定期総会

定額給付金支給に関する会長談話
2009年3月4日、「景気後退下での住民の不安に対処するため、住民への生活支援を行なう」ことを目的とした定額給付金の支給が決定された。
総務省の事業概要によれば、基準日(平成21年2月1日)の時点で、住民基本台帳または外国人登録原票のいずれかに載せられている人たちに給付金を支給することとしたものの、その支給先としては、個々の住民にではなく、住民票上の世帯主に一括して支給することとした(但し、外国人登録者の場合には個々の住民に支給される)。しかも、申請期限は受付開始から6ヶ月としている。
しかし、配偶者からの暴力等により住民票の異動をせずに生活しているDⅤ被害者の人たち、実際には別居しているが離婚問題が解決するまで住民票を異動できない事情がある人たち、基準日前に離婚や別居が合意されたが住民票の異動が間に合わなかった人たち、基準日直後に別居に至った人たち、あるいは、離婚事件に限らずとも訳あって住民票の住所地に居住していない人たち(ホームレス、ネットカフェ難民等)など、住所と居所が相違する人たちは多数存在する。逆に、住所と居所は同一でも、家庭内別居のまま係争している夫婦や家族もいる。
これらの人たちとしては、上記基準に従い、画一的に、世帯主に対して定額給付金が支給された場合には、加害者だったり、離婚紛争の相手方であったり、人間関係が非正常な家族であったりする世帯主等に対して、直接、定額給付金の交付を求めなければならないことになる。しかしながら、このような行動が期待できないことは、事案の内容を考えれば自ずと明らかである。
そうすると、これらの人たちは、具体的権利である定額給付金受給権を事実上行使できず、同権利が否定されたに等しい結果となりかねない。
新潟県弁護士会は、基本的人権の擁護と社会正義の実現を使命とする団体として、国の施策実施に際し、このような実質的不平等が、いわゆる社会的弱者の側に発生し又は発生する恐れが極めて高い状況にあること、それにも拘らず、その抜本的対策が採られていないことについて深く憂慮する。
よって、定額給付金事業の実施主体である新潟県内の各地方自治体に対し、次の通り要望する。
①まず、画一的処理に親しまない人たちが多数いること及び具体的支給方法如何では、憲法で保障された平等権を侵害するおそれがあることを具体的に認識すること、
②それらの問題に的確に対応するため、個々の受給者の事情にも十分配慮すること
例えば、以下の諸事情のある場合には、当該受給者分の定額給付金の世帯主への支給を一旦中止して対応を検討する、弁護士会の法律相談や法テラスを紹介するなどの配慮がなされるべきである。
別居家族やDV被害者の代理人弁護士から地方自治体に対して、別居家族や紛争当事者分の定額給付金を世帯主へ支給しないよう要請があった場合
基準日以降一定期間内(例えば6ヶ月以内)に離婚届出をした夫婦の場合(この事実は支給する地方自治体に顕著である)
その他、以下の書類が提示された場合。離婚後の住民票、DⅤの保護命令、調停調書、判決、法的紛争が係属中であることを証する文書、別居者の賃貸借契約書、その他客観的に別居の事実を確認できる文書など
以上のような事例においては、紛争が6ヶ月程度では解決しない場合も多いので、申請日と支給時期が大きく乖離する場合にも、支給時期についても柔軟な対応や格段の配慮を行うよう要望する。
平成21年3月23日
新潟県弁護士会会長 髙野 泰夫

少年審判における被害者等の傍聴は厳格に行うべきことを求める会長声明
今般、被害者等(被害者や遺族)による少年審判傍聴を認める「改正」少年法が成立した。被害者等による少年審判傍聴(以下、「被害者傍聴」という。)の導入は、少年の健全育成を目的とする少年法の理念に照らし多くの問題があることは、当会、日弁連及び全国の単位弁護士会の会長声明等で指摘したとおりである。しかるに、今回、国会審議が尽くされたとはいえないまま、少年法の基本理念を揺るがしかねない「改正」が行われたことは誠に遺憾である。
この「改正」は、当会等が指摘した問題点を踏まえ、法案の傍聴許可要件に、次の要件を付加して成立した。
1.少年の健全な育成を妨げるおそれがないこと
2.予め弁護士付添人の意見聴取を要すること(同付添人未選任時は、同選任を原則として義務付)
3.12歳未満の少年審判は被害者等の傍聴対象外とすること
4.12歳、13歳の触法少年については精神的に特に未成熟であることを十分に考慮すべきこと
しかしながら、この要件付加によっても、家庭裁判所の運用如何では、被害者傍聴が容易に認められ、その結果、少年法の基本理念を揺るがす事態を引き起こしかねない、と考える。
要件1の認定は、当該少年の性格、従前の供述内容、事情聴取や調査における態度、普段の生活態度や生活状況などを踏まえ、更に、被害者傍聴についての少年や保護者の気持、従前の被害者等の態度など諸般の事情を勘案したうえで、被害者傍聴を許可しても少年の自由で率直な供述を妨げるおそれがないと認められる事例について、「少年の健全な育成を妨げるおそれがない」と認定しうる場合に限るべきである。なぜならば、被害者傍聴による、少年の萎縮や迎合によって、率直な供述をなしえない可能性、その結果当該少年の更生にとって適切とは言い難い処分がなされる危険性を否定できないからである。
また、要件2について、少年及び保護者が「付添人を不要との意思を明示した時」には弁護士付添人選任義務を免除している点は不当である。なぜならば、少年及び保護者が、少年の権利擁護者であるはずの弁護士付添人を選任すれば、被害者に反省の態度が伝わらないかのように誤解している例が少なからずあるし、少年と保護者との関係が破綻している事例、世間体を気にして事案を理解しようとせず少年の意思を無視抑圧してでも早期に事件終結を図ろうとする保護者の事例等では、保護者が弁護士付添人選任を拒否し、その結果、弁護士付添人が選任されないことがありうるからである。これでは少年の権利を十全に擁護し得ない。
少年の権利擁護者たる付添人の不選任を容認する場合には、少年や保護者において、付添人の立場や役割を十分に理解していること、その意思が明確に表示されていることはもちろん、その意思確認の方法についても、少年や保護者の真意を十分に汲み取ることができる方法である必要がある。これらは、最高裁判所規則に委任されているから、最高裁判所は、同規則制定にあたり、ことが付添人選任に関するものであることを踏まえ、曖昧な意思表示や事務的な意思確認処理を容認するものであってはならず、厳格な手続履践を核とする意思確認規則を設けるべきである。
以上より、当会は、今後の「改正」少年法の運用を注視しつつ、少年付添人活動、犯罪被害者支援活動の一層の充実強化を図るとともに、最高裁判所に対しては厳格な規則の制定を、家庭裁判所に対しては少年の健全育成の理念を損なうことのないよう被害者傍聴許可要件の厳格運用を強く求めていく決意である。
2008(平成20)年7月7日
新潟県弁護士会会長 髙野 泰夫

名古屋高裁自衛隊イラク派遣差止訴訟判決に関する決議
本年4月17日、名古屋高等裁判所は、いわゆる自衛隊イラク派遣差止訴訟において、以下のような判決を下した。
すなわち、本判決は、現在のイラク国内における多国籍軍と武装勢力の間の戦闘は、実質的には平成15年3月当初のイラク攻撃の延長であって、外国勢力である多国籍軍対イラク国内の武装勢力の国際的な武力紛争が行われているといえるとし、特に、首都バグダッドは、イラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動の実施に関する特別措置法(以下「イラク特措法」という。)上の「戦闘地域」に該当するとした。そして、航空自衛隊のバグダッド空港への空輸活動は、多国籍軍の戦闘行為にとって必要不可欠な軍事上の後方支援を行っているものということができ、航空自衛隊の空輸活動のうち、少なくとも多国籍軍の武装兵員を「戦闘地域」であるバグダッドへ空輸するものについては、他国による武力行使と一体化した行動であって、自らも武力行使を行ったとの評価を受けざるを得ず、政府と同じ憲法解釈に立ち、イラク特措法を合憲とした場合であっても、武力行使を禁止したイラク特措法2条2項、活動地域を非戦闘地域に限定した同条 3項に違反し、かつ、憲法9条1項に違反する活動を含んでいると判断した。
また、本判決は、憲法前文の平和的生存権について、全ての基本的人権の基礎にあってその享有を可能ならしめる基底的権利であり、裁判所に対してその保護・救済を求め法的強制措置の発動を請求し得る具体的権利性が肯定される場合があると判断した。
このように、高等裁判所において自衛隊の活動の違憲性が正面から判断されたこと及び平和的生存権の具体的権利性が肯定されたことはいずれも憲法制定後初めてであり、画期的なことである。本判決は、法の解釈、適用という裁判所本来の権限を行使してその職責を全うし、これまで判断の回避がなされることの多かった問題に真正面から取り組むものとして、高く評価されるべきものである。
本判決について、政府は、違憲判断は傍論にすぎないなどとして特段の対応をとるつもりはないとの態度を示し、航空自衛隊のトップである航空幕僚長は、本判決を揶揄するかのような発言をしている。しかし、憲法の最高法規性(憲法98条1項)、国務大臣、公務員らの憲法尊重擁護義務(同99条)の各規定、行政府の違憲行為を司法府によって統制しようとする権力分立の観点に照らせば、上記政府の対応等は誠に遺憾である。政府は、高等裁判所が今回の自衛隊の空輸活動をイラク特措法、憲法9条1項に反すると判断したことを真摯に受け止めるべきである。
よって、当会は、政府に対し、本判決の趣旨を十分に考慮し、航空自衛隊のイラクにおける空輸活動を直ちに中止し、航空自衛隊を撤退させるよう求める。
平成20年5月23日
新潟県弁護士会定期総会

被害者等による審判傍聴規定新設を含む少年法改正案に反対する会長声明
内閣は、本年3月7日、今通常国会(第169回)に「少年法の一部を改正する法律案」(閣第68号)を提出し、間もなく衆議院において同法律案の審議が始まろうとしている。
しかし、上記法律案には、少年法の理念と目的に照らし、以下のとおり問題があるため、当会は上記法律案に反対する。
1.被害者等による少年審判の傍聴について
上記法律案は、故意の犯罪行為により被害者を死傷させた罪、刑法211条(業務上過失致死傷等)の罪について、家庭裁判所が、被害者等から、審判期日における審判の傍聴の申出がある場合において、少年の年齢及び心身の状態、事件の性質、審判の状況その他の事情を考慮して相当と認めるときは、傍聴を許すことができるとしている。
しかし、被害者等に審判の傍聴を許すことには、少年の責任追及ではなく健全育成を目的とし(少年法1 条)、少年の言い分を受け止めることを通じて少年自ら内省を深め更生の意欲を育てるという少年審判の教育的・福祉的機能を後退させるおそれがある。被害者等にとっても、事件から間もない時期に審判を傍聴すべきか否かの決断という新たな心の負担を負うこととなる上、被害者等の傍聴により少年が萎縮し事実や心情を率直に語ることが困難となる結果、被害者等の「事実を知りたい」という切実な願いも実現されない可能性が高く、苦しみや悲しみをさらに深めるだけに終わりかねない。
さらに、家庭裁判所が「相当と認めるとき」という要件も曖昧で少年の更生よりも事案の重大性等を重視し安易に傍聴を許す運用がされかねない点、対象事件に萎縮可能性が類型的に高いと考えられる14歳未満の少年による触法事件をも含めている点も極めて問題である。
2.被害者等による記録の閲覧・謄写の範囲の拡大について
上記法律案は、被害者等による記録の閲覧謄写の要件を現行法よりも緩和し、閲覧謄写を原則可能とし、対象となる記録の範囲も法律記録の少年の身上経歴等に関する部分にまで拡大している。
しかし、このような法改正は、少年や親族等関係者のプライバシーに関する情報の流出の危険を増し、少年の健全育成という少年法の目的実現の妨げとなりかねない。現行法の運用上、被害者等による記録の閲覧謄写は十分に機能しており、これ以上に、閲覧謄写を原則可能とし対象となる記録の範囲を拡大する必要性はない。
もとより、犯罪被害者等の支援は重要な課題であり、事件直後から専門家による支援や心のケアを受けられる制度の一層の充実が図られるべきである。しかし、犯罪被害者等の保護と少年の健全育成という少年法の理念・目的との調整は、上記法律案のような少年法の根幹に関わる法改正によってではなく、現行法の被害者等による記録の閲覧謄写(少年法5条の2)、被害者等の意見聴取(同法9条の2)、審判の結果通知(同法31条の2)といった諸規定を十分に活用することにより図られるべきである。少年審判の傍聴についても、被害者等がいる場で審判を受けることが少年の健全育成に資すると考えられる場合は、少年審判規則29条に基づき被害者等の在廷を許可する運用例があるのであり、現行法の解釈として認められる範囲で行われるべきである。
以上より、当会は、被害者等による少年審判の傍聴を認め、被害者等による記録の閲覧謄写の要件緩和、対象となる記録の範囲拡大を内容とする上記法律案に反対し、国会における廃案を求める。
2008(平成20)年4月21日
新潟県弁護士会会長 髙野 泰夫