2335 どんたく三重弁護士会②

司法修習生に対する給付型の経済的支援を求める会長声明
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司法制度は、社会に法の支配を行き渡らせ、国民の権利を実現するための極めて重要な社会インフラである。かかる司法制度の担い手である法曹(弁護士、裁判官、検察官)の要請は、個人的資格の取得という意味にとどまらず、高い公共的価値を有する。従って、国家は本来的に、公費をもって質の高い法曹を養成すべき責務がある。
このような理念のもと、我が国では、昭和22年の司法修習制度開始以来、法曹となる司法修習生に対し、裁判所法により司法修習期間中の修習専念義務を課す一方で、医療保険などの身分保障を与え、生活費等の必要な資金を国費から支給する制度(給費制)がとられてきた。その結果、司法修習生は、経済的側面から司法修習への専念が現実的に可能になるとともに、法曹として養成された後は、自らが国費によって養成されたことの意義を理解し、公共的価値の実現をその使命として意識することができた。
平成23年11月以降、改正裁判所法の施行により、給費制が廃止され、修習期間中に費用が必要な修習生に対しては、修習資金を貸し付ける制度(貸与制)へと変更されたが、時を同じくして、法曹志望者は年々減少の一途を辿っている。司法修習生には、修習資金の負債のほか、大学や法科大学院における奨学金の債務を負っている者も多く、こうした重い経済的負担が、法曹を志す者の意欲を減退させ、法曹志望者激減の大きな要因となっていることは明らかである。
充実した司法を維持形成するために、担い手たる法曹には、多様かつ有為な人材の確保が強く要請されるところであるが、優秀な人材が経済的不安を理由に法曹への道を断念する事態は、国民ひいては社会全体にとって大きな損失である。司法修習生が安心して修習に専念できる環境を整え、質の高い法曹を養成するために、司法修習生に対する給付型の経済的支援(修習手当の創設)が早急に実施される必要がある。
ところで、司法修習生への給付型の経済的支援(修習手当の創設)については、この間、日本弁護士連合会・各弁護士会に対して、多くの国会議員から賛同のメッセージが寄せられているが、先日、その賛同メッセージの総数が、衆参両院の合計議員数716名の過半数である359名に達した。メッセージを寄せられた国会議員は、与野党を問わず広がりを見せており、司法修習生への経済的支援の必要性についての一般的理解が得られつつあるものといえる。
また、平成27年6月30日、政府の法曹養成制度改革推進会議が決定した「法曹養成制度改革の更なる推進について」において、「法務省は、最高裁判所等との連携・協力の下、司法修習の実態、司法修習終了後相当期間を経た法曹の収入等の経済状況、司法制度全体に対する合理的な財政負担の在り方等を踏まえ、司法修習生に対する経済的支援の在り方を検討するものとする。」との一節が盛り込まれた。これは、司法修習生に対する経済的支援の実現に向けた大きな前進と評価できる。法務省、最高裁判所等の関係各機関は、有為の人材が安心して法曹を目指せるような希望の持てる制度とするという観点から、このような司法修習生に対する経済的支援の実現について、直ちに前向きかつ具体的な検討を開始すべきである。
ところで、給費制が有する公共的意義にもかかわらず、改正裁判所法により給費制が廃止された実質的理由のひとつに、司法試験合格者が将来年間3000人に増大することに伴う財政的負担の増大ということがあった。しかし、合格者数については、その後平成25年までは2000人程度、平成26年及び27年は1800人程度で推移しており、更に、「法曹養成制度改革の更なる推進について」において今後1500人程度への縮小方針も示されている現状を踏まえれば、かかる理由の前提は既に失われていると言わざるを得ない。
以上より、当会は、司法修習生への給付型の経済的支援(修習手当の創設)について、国会議員の過半数が賛同のメッセージを寄せていること、及び、政府においても上記のような決定がなされたことを踏まえ、国会に対して、給付型の経済的支援(修習手当の創設)を内容とする裁判所法の早急な改正を強く求める。
2016年1月20日
三重県弁護士会 会長 川端康成

憲法違反の安全保障法制改定法案に反対し、廃案を求める会長声明
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2015年(平成27年)5月14日、政府は、いわゆる安全保障法制改定法案、すなわち、自衛隊法、武力攻撃事態法、周辺事態法、
国連平和維持活動協力法等の関連10法案を一括して一部改正する「我が国及び国際社会の平和及び安全の確保に資するための自衛隊法等の一部を改正する法律」(平和安全法制整備法案)及び新規立法である「国際平和共同対処事態に際して我が国が実施する諸外国の軍隊等に対する協力支援活動等に関する法律」(国際平和支援法案)(以下併せて「本法案」という。)を閣議決定し、5月15日、第189回通常国会に
本法案を提出した。7月15日、本法案は、衆議院平和安全法制特別委員会にて国民の十分な理解を得られないまま強行的に可決された。
本法案は、従前の政府の憲法解釈を変更して集団的自衛権の行使を容認した2014年(平成26年)7月1日の閣議決定を具体化した内容を含むとともに、2015年(平成27年)4月27日に国内法制に先行して見直しが合意された「日米防衛協力のための指針」を法制化した内容となっている。
しかし、当会が2014年(平成26年)5月14日付「集団的自衛権の行使容認に反対する会長声明」でも指摘しているとおり、憲法9条下では集団的自衛権の行使は許されないというのが確立された政府解釈であったにもかかわらず、集団的自衛権の行使を容認する昨年7月の閣議決定及び本法案は、憲法前文及び憲法第9条を憲法改正手続によることなく改変するものであり、立憲主義に明らかに反するものである。
加えて、本法案は、憲法9条下では認められない集団的自衛権の行使を容認することはもとより、以下の問題点からも、憲法に違反するものといわざるをえない。
本法案は、「我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態」を「存立危機事態」と称し、この場合に、地理的な限定なくして他国軍隊とともに武力を行使することを可能としている。しかし、「存立危機事態」とは抽象的で不明確であり、時の政府によって濫用されるおそれが否定できず、国会の事前承認についても特定秘密保護法施行下、緊急時の例外も認められており、歯止めとして機能するか否かは甚だ疑問であり、武力行使を容認する場面が際限なく広がっていくおそれは極めて大きいといわざるをえない。
次に、我が国の平和と安全に重大な影響を与える「重要影響事態」や、国際社会の平和と安全を脅かす「国際平和共同対処事態」において、現に戦闘行為が行われている現場でなければ、地理的限定なくどこでも、自衛隊が戦争を行っている他国軍隊に対し、弾薬の提供や兵員の輸送、戦闘機等への給油・整備等の支援活動を行う事を可能としている。兵站は戦争に不可欠なのであるから、これでは他国との武力行使の一体化は避けられず、憲法9条1項により日本国民が「永久にこれを放棄した」はずの「武力の行使」に道を開くものである。
さらに、これまでの国連平和維持活動(PKO)のほかに、国連が統括しない有志連合等の「国際連携平和安全活動」にまで業務範囲を拡大し、従来PKOにおいてその危険性故に禁止されてきた安全確保業務や「駆け付け警護」を行うこと、及びそれに伴う任務遂行のための武器使用を認めている。しかし、この武器使用は、自己保存のための限度を超えて、相手の妨害を排除するためのものであり、自衛隊員を自ら殺傷し、殺傷される現実の危険にさらし、さらには偶発的な衝突などの戦闘行為から武力の行使に発展する道を開くものである。これらに加え、本法案は、武力攻撃に至らない侵害への対処として、新たに他国軍隊の武器等の防護を自衛官の権限として認めている。これは、現場の判断により戦闘行為に発展しかねない危険性を飛躍的に高めるものである。
以上のとおり、本法案は、憲法第9条に反し違憲である。上述のとおり、当会は、2014年(平成26年)5月14日付「集団的自衛権の行使容認に反対する会長声明」において、憲法解釈の変更による集団的自衛権行使容認に対し、反対の意思を表明した。衆議院憲法審査会において与党推薦を含む憲法学者でもある参考人全員が集団的自衛権の行使を容認する本法案は違憲であるとの意見を表明し、2015年(平成27年)6月16日には都道府県で初めて三重県議会において「安全保障法制の慎重な審議を求める意見書」が可決され、県内市町議会でも法案廃止や国民に対する丁寧な説明、慎重審議を求める意見書等が可決されている。それにもかかわらず、政府・与党は、戦後最長となる95日間にも及ぶ会期延長をし、あくまで今会期での成立を目指している。
当会は、「基本的人権の擁護と社会正義の実現」を使命とする法律家の団体として、憲法の諸原理を尊重する立場から、憲法違反の本法案に強く反対するとともに廃案とするよう求める。
2015年7月15日
三重県弁護士会 会長 川端康成

夫婦同氏の強制及び再婚禁止期間についての最高裁判所大法廷判決を受けて民法における差別的規定の改正を求める会長声明
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2015年12月16日、最高裁判所大法廷は、夫婦同氏の強制を定める民法第750条は憲法第13条、同第14条、同第24条のいずれにも違反するものではないと判断した。その理由として、婚姻の際の「氏の変更を強制されない自由」は憲法上保障されていないこと、夫婦同氏の強制それ自体に男女間の形式的な不平等が存在するわけではないこと、個人の尊厳と両性の本質的平等という憲法第24条の要請に照らして夫婦同氏の強制が合理性を欠くとは認められないことなどが挙げられている。
しかしながら、民法第750条は、憲法第13条及び同第24条が保障する個人の尊厳、同第24条及び同第13条が保障する婚姻の自由、同第14条及び同第24条が保障する平等権を侵害し、女性差別撤廃条約第16条第1項(b)が保障する「自由かつ完全な合意のみにより婚姻をする同一の権利」及び同行(g)が保障する「夫及び妻の同一の個人的権利(姓及び職業を選択する権利を含む。)」にも反するものである。
今回の最高裁大法廷判決においても、5名の裁判官(3名の女性裁判官全員を含む。)が、民法第750条は憲法第24条に違反するとの意見を述べた。そのうち岡部喜代子裁判官の意見(櫻井龍子裁判官、鬼丸かおる裁判官及び山浦善樹裁判官が同調)は、夫婦同氏の強制によって個人識別機能に対する支障や自己喪失感等の負担がほぼ妻に生じていることを指摘し、その原因として、女性の社会的経済的な立場の弱さや家庭生活における立場の弱さと、事実上の圧力など様々なものがあることに触れており、夫婦同氏の強制が個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚した制度とはいえないと説示している。さらに、木内道祥裁判官の意見は、夫婦同氏の強制は、憲法第24条にいう個人の尊厳と両性の本質的平等に違反すると説示し、「家族の中での一員であることの実感、夫婦親子であることの実感は、同氏であることによって生まれているのだろうか」と疑問を投げかけている。
法制審議会は、1996年に「民法の一部を改正する法律案要綱」を総会で決定し、男女とも婚姻適齢を満18歳とすること、女性の再婚禁止期間の短縮及び選択的夫婦別姓制度の導入を答申した。また、国連の自由権規約委員会は婚姻年齢に男女の差を設ける民法第731条及び女性のみに再婚禁止期間を定める民法第733条について、女性差別撤廃委員会はこれらの規定に加えて夫婦同氏を強制する民法第750条について、日本政府に対し重ねて改正するよう勧告を行ってきた。法制審議会の答申から19年、女性差別撤廃条約の批准から30年が経つにもかかわらず、国会は、上記各規定を放置してきたものである。今回の最高裁大法廷判決における山浦善樹裁判官の反対意見も、1996年の法制審議会の答申意向相当期間を経過した時点において、民法第750条が憲法の諸規定に違反することが国会にとっても明白になっていたと指摘している。
一方、上記同日、女性のみに6か月の再婚禁止期間を定める民法第733条について、最高裁判所大法廷は、100日を超えて再婚禁止期間を設ける部分は合理性を欠いた過剰な制約を課すものとして、憲法第14条第1項及び同第24条第2項に違反するとの判断を下した。
民法第733条を違憲であるとした点については、当会の主張と合致するものである。しかし、女性のみに再婚禁止期間を設けることは、その期間を100日間に短縮したとしても必要最小限にしてやむを得ないものとはいえない。
今回の最高裁大法廷判決における鬼丸かおる裁判官の意見も、女性について6か月の再婚禁止期間を定めていることは、憲法第14条第1項及び同第24条第2項に違反し、その全部が無効であると説示している。また、山浦善樹裁判官の反対意見は、多数意見が指摘する父性推定重複の問題に関して、「近年の医療や科学水準を前提にすれば、生物学上の父子関係の判定は容易にできる」とし、法的手続において「最高の科学技術を活用して真実の父を定めることこそが本当の子の利益になる」として、民法第733条はその全部が違憲と説示している。
当会は、日本国憲法が定める個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚した家族法を実現するため、国に対し、民法第750条及び同第733条並びにこれらの規定とともに法制審議会にて改正が答申され、国連の自由権規約委員会及び女性差別撤廃委員会から勧告がなされている同第731条(婚姻適齢)を速やかに改正することを強く求める。
2016年1月27日
三重県弁護士会 会長 川端康成

少年法の適用年齢引下げに反対する会長声明
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選挙権年齢を18歳以上に引き下げる改正公職選挙法が今国会で成立した。同法の附則は、少年法の適用年齢引下げの検討を求めている。自由民主党は、「成年年齢に関する特命委員会」を設置し、少年法の適用年齢の引下げについても検討を始めた。
選挙権年齢の引下げは、将来を担う若者が社会保障制度など国のあり方に関心を持ち、その議論に参加することを促すという面で意義がある。しかしながら、法律の趣旨目的はそれぞれ異なるものであり、選挙権年齢の引下げに合わせて少年法の適用年齢も引き下げるといった性急な議論は避けなければならない。慎重な検討が求められる。
少年法の適用年齢引下げに賛成の立場からは、「選挙権年齢引下げにより権利を得るのであるから、相応の義務や責任を負うべきである」という議論や、「少年事件の凶悪化に対処すべきである」との意見が聞かれる。
しかしながら、現行少年法において、少年が相応の義務や責任を負っていないという議論は理由がないものである。少年法のもとにおいては、少年事件は全件家庭裁判所へ送致され、少年鑑別所での資質鑑別や家庭裁判所調査官の社会調査に基づいて、少年の要保護性に応じた保護処分が下される。保護処分の中には、少年院送致による矯正教育も含まれる。成人であれば不起訴処分で終わるような軽微な事案であっても、少年の場合には少年院送致となる可能性があり、必ずしも保護処分が軽い処分であるわけではない。また、家庭裁判所が刑事処分相当と判断した事件は、検察官へ送致され(逆送)、少年であっても成人と同様の刑事処分を受けることとなる。特に、犯行時16歳以上の少年が故意の犯罪行為により被害者を死亡させるといった重大事件については原則として逆送され、公開の法廷で裁判員裁判を受けるのであり、犯行時18歳以上の少年には死刑判決を下すこともできる。少年が特に保護され軽い処分を受けているという事実は存在しないのである。
少年事件の凶悪化の議論については、少年非行の件数は、検挙人数、少年の人口比率ともに減少しており、少年による殺人、強盗、放火、強姦といったいわゆる凶悪犯罪についても、ピーク時からは激減し、現在は横ばい又は減少のまま推移している。したがって、少年事件が凶悪化しているという事実は存在しない。
他方、少年法の適用年齢の引下げは、18歳、19歳の少年から一律に少年法における保護処分を受ける機会を奪うことを意味する。少年法は、少年に対して、教育的、保護的、福祉的措置を講ずることによって、少年の更生を促し、再非行の防止につなげている。既述のとおり、凶悪事件も含め、少年非行の件数が減少していることは、まさに少年法が上手く機能していることの現れである。18歳、19歳の少年を少年
法の対象から外せば、少年事件の中で大きな割合を占める万引き等、比較的軽微な犯罪を行った少年の多くは、成人と同じ刑事手続の中で不起訴処分により何らの処分を受けないか、罰金等の軽い処分を受けるにとどまり、教育的、保護的、福祉的措置を受けられないまま終わることとなる。不起訴処分や罰金等の軽い処分で終わってしまった少年は、少年鑑別所での指導や家庭裁判所調査官の働きかけを受けることができず、更生する機会を失うことになる。18歳、19歳の少年の再犯率の増加等が懸念される。
旧少年法においては適用年齢が18歳未満であったのを、現行少年法において20歳未満に引き上げたのは、未熟な年齢の少年には刑罰によって対処するのではなく、教育的措置により立ち直りの機会を与えるためであったはずである。選挙権を得る少年は相応の義務や責任を負うべきであるとの理由や、少年事件の凶悪化へ対処しなければならないとの理由から、少年法の適用年齢の引下げを行うべきであるという意見は、根拠を欠いているだけでなく、少年法の本来の目的を忘れ、時代に逆行するものであるといえる。
以上のとおり、少年法の適用年齢の引下げには強く反対する。
2015年7月15日
三重県弁護士会 会長 川端康成

通信傍受法の対象犯罪拡大や司法取引の導入などを含む、刑事訴訟法などの改正案の閣議決定を受けて、国会での慎重審議を求める会長声明
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政府は、平成27年3月13日、法制審議会「新時代の刑事司法制度特別部会」(以下「特別部会」という。)の答申案(以下「答申案」という。)を法案化した刑事訴訟法などの改正案(以下「改正案」という。)を閣議決定し、国会に提出した。
 改正案は答申案を踏襲しており、答申案と同じ問題を含むことから、当会は、特別部会で個別論点毎に審議され、指摘された問題点について、改めて国会においても慎重な審議を尽くすことを求めたい。
 すなわち、取り調べの可視化は、その対象事件を裁判員裁判対象事件と検察官独自捜査事件に限定している。また、例外事由には、「被疑者の言動により、記録をしたならば被疑者が十分な供述をすることができないと認めるとき」という抽象的なものがあり、例外に該当するか否かの判断を捜査官に委ねる内容になっている。
 証拠開示制度については、検察官が保管する証拠の一覧表の交付、公判前整理手続及び期日間整理手続の請求権の付与、類型証拠開示の対象拡大に止まるものである。証拠の一覧表については、警察官の保管する証拠が対象とされていない。また、検察官が「犯罪の証明又は犯罪の捜査に支障が生ずるおそれ」などがあると認めるものは、一覧表に記載しないことができるとして検察官による裁量を認めている。
 他方、通信傍受法については、制定時、日弁連は「対象犯罪が組織犯罪に限定されておらず、別件の傍受・逆探知を容認している。また、将来発生する犯罪へ捜査を広げ、令状に記載される通信される通信内容の特定が不十分である。さらに、事後救済措置にも問題があるなど憲法31条、35条の要件を満たしているとはいえない。」などと繰り返し反対した。それにも拘わらず、組織的な重大犯罪のみを対象に、また、通信事業者の立ち合いなどを要件として法制化されたという経緯がある。
 ところが、改正案は、「数人の共謀によるもの」と疑うに足りる状況があり、かつ、「あらかじめ定められた役割の分担に従って行動する人の結合体により行われたもの」という要件はあるものの、傷害、詐欺、恐喝、窃盗などの犯罪にまで対象を拡大した。さらに、改正案は、特定装置(傍受した通信や傍受の経過を自動的に記録し、これを即時に暗号化する機能等を有する装置)を用いることを条件に、通信事業者の立ち合いを不要としている。これは、憲法違反の疑いのある通信傍受法の対象を拡大し、手続を簡略化することに他ならない。
 また、捜査公判協力型協議・合意制度も、引き込みの危険(逮捕勾留された者が、自らの刑事訴追を逃れたい、少しでも軽くしたいと考え、捜査機関から「恩典」をちらつかせられることにより虚偽の供述をし冤罪を生み出す危険性が高いこと)などが指摘されている。現に、去る3月5日、名古屋地方裁判所は、美濃加茂市長の収賄事件において、贈賄側の証言は信用性を否定し、市長に無罪を言い渡した。この判決は、現金授受の存否に関する判断において、現金を受領したと認めるにはなお合理的な疑いが残ると判断した後、重ねて虚偽供述の動機の可能性について検討し、贈賄側の証人について「自身の刑事事件の情状を良くするために、捜査機関、特に検察官に迎合し、少なくともその意向に沿う行動に出ようと考えることは十分にあり得るところである。」などと指摘している。
 当会は、国に対し、今後、改正案を国会で審議するにあたり、改めて、特別部会で個別論点毎に審議され、指摘された問題点に十分配慮し、慎重審議を尽くすよう強く要望する。
2015年5月13日  
三重県弁護士会 会長 板垣謙太郎