2338 ら特集山梨弁護士会③

山梨県弁護士会
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憲法解釈の変更による集団的自衛権の行使容認と国家安全保障基本法案の国会提出に反対する会長声明
1. 2012年12月の衆院選で、自由民主党(以下、「自民党」という。)が大勝し、政権与党となって以来、集団的自衛権の行使を容認する動きが加速している。安倍首相は、2013年1月13日に放送されたテレビ番組で、「集団的自衛権行使の見直しは安倍政権の大きな方針の一つ」と述べた。
また、同年2月8日、「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(以下、「安保法制懇」という。)が、約5年ぶりに再開された。首相官邸のHPによれば、安保法制懇の開催趣旨として、「我が国周辺の安全保障環境が一層厳しさを増す中、それにふさわしい対応を可能とするよう安全保障の法的基盤を再構築する必要があるとの問題意識の下、集団的自衛権の問題を含めた、憲法との関係の整理につき研究を行うため、内閣総理大臣の下に「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」を開催するものです。」とある。
安保法制懇は、平成20年6月4日報告書により、政府に対し、「憲法9条は、個別的自衛権はもとより、集団的自衛権の行使や国連の集団安全保障への参加を禁ずるものではないと解釈すべきものと考えられる。」と提言した。今回は安倍首相が前回の検討事項に加え、自民党が衆院選の公約に掲げた国家安全保障基本法(2012年7月6日に自民党総務会でその概要が決定)の制定など、新たな課題についても検討するよう諮問した。今回の安保法制懇では、年内に首相への報告書をまとめる方針とされている。
2. 集団的自衛権とは、政府解釈によれば、「自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、実力をもって阻止する権利」(1981年5月29日政府答弁書)とされる。
これまで、政府は、個別的自衛権については、自国に対して武力攻撃が加えられた場合に、これを排除するために必要最小限度の範囲で実力を行使することは憲法に違反しないと説明してきたが、集団的自衛権については、その行使は憲法上許されないとの立場を長らく堅持してきた。
日本国憲法が、憲法前文で平和的生存権を確認し、第9条で戦争放棄、戦力不保持及び交戦権否認を定めるなど、徹底した恒久平和主義を採用したことから、当会は、集団的自衛権の行使は憲法違反であると解するが、政府が、安保法制懇の報告書をもとに、集団的自衛権の行使を容認すべく政府見解を変更しようとすることは、さらに憲法尊重擁護義務(憲法第99条)が国務大臣や国会議員に定められていることからも、許されないと解する。
3. また、国家安全保障基本法案(概要)は、集団的自衛権の行使を、憲法改正の手続を経ることなく、法律により容認しようというものであるが、下位にある法律によって憲法の解釈を変更することは、憲法に違反する法律や政府の行為を無効とし(憲法第98条)、政府や国会が憲法に制約されるという立憲主義に反するものであって、到底許されないと解する。
4. 当会は、日本国憲法によって否定されている集団的自衛権の行使を、政府による憲法解釈の変更によって容認すること、及び集団的自衛権の行使を明記した国家安全保障基本法を成立させようとすることに対し、強く反対する。
2013年11月9日
山梨県弁護士会会長 東條 正人

特定秘密保護法案に反対する会長声明
1. はじめに
2013年10月25日、政府は、特定秘密保護法案(以下、法案という)を閣議決定し、国会に提出した。
これまで、当会は、2012年5月22日秘密保全法制に反対する総会決議、2013年9月9日特定秘密の保護に関する法律案に反対する意見書をそれぞれ発出してきた。秘密保全法制や法案に反対する意見書は日弁連や各地の弁護士会からも同様に発出され、マスコミも法案の問題点について連日報道をしている。
また、政府が法案の提出に先立って実施したパブリックコメントにおいては、わずか2週間の間に9万件を超える意見が寄せられ、そのうちの実に4分の3以上となる約77%が法案に反対している結果となった。さらに共同通信社が閣議決定後の2013年10月26、27両日に実施した全国電話世論調査によると法案には過半数が反対し、法案の慎重な審議を求めている意見が8割を超えたとの報道がなされた。このように全国的に法案の成立を危惧する意見が続出する中でなされた法案の閣議決定及び国会提出は、国民的議論がほぼなされない中での拙速の極みであり、暴挙と言わざるを得ない。
2. 法案の問題点
これまで当会が発出した意見書で述べた問題点に加え、このたび閣議決定された法案に対して、いくつかの問題点を指摘する。
(1) 第1に、秘密指定に関して、「特定秘密の指定及びその解除並びに適性評価の実施に関し、統一的な運用を図るための基準を定めるものと」し(18条1項)その「基準を定め、又はこれを変更しようとするときは、(中略)優れた識見を有する者の意見を聴かなければならない。」(同条2項)とされた。
この点、「優れた識見を有する者」の意見を聴くとされるが、有識者が関与するのは運用基準の策定に限定され、秘密指定には関与できない。さらに、基準の策定についてさえも有識者の意見に拘束されるわけではない。秘密指定に客観的な第三者のチェックは行わせず、さらに指定の運用基準は公開しないという前提であれば、基準の客観性を担保できない。
内閣官房内での実施状況のチェックがなされるとしても、身内をかばうことの危険を否定できず、時の政府による恣意的な秘密指定がなされうることに変わりはない。(2) 第2に、秘密指定の有効期間の延長に関して、「指定の有効期間が通じて30年を超えることとなるときは、(中略)内閣の承認を得なければならない。」(4条3項)とされた。
しかし、指定期間が30年を超える場合には内閣の承認を必要とするとしても、指定権者である行政機関の長の判断を追認する形で内閣の承認がなされることが予想され、指定が恒久化してしまう危険性が高い。指定が恒久化した場合、それが真に秘密に値するものであったのか、単に政府の都合による恣意的な指定であったのかを国民は知りえないことになる。なお、秘密が残されていれば後日の検証が可能となるが、秘密が恣意的に廃棄された場合には、検証の機会がない点でも問題が残る。(3) 第3に、知る権利等に関して、「国民の知る権利の保障に資する報道又は取材の自由に十分に配慮しなければならない。」(21条1項)とされ、「出版又は報道の業務に従事する者の取材行為については、専ら公益を図る目的を有し、かつ、法令違反又は著しく不当な方法によるものと認められない限りは、これを正当な業務による行為とするものとする。」(21条2項)こととされた。
しかし、21条1項の報道又は取材の自由に十分配慮するとの規定も、抽象的な訓示規定に過ぎず、これにより報道又は取材の自由が担保される保障は何もない。「専ら公益を図る目的」「著しく不当な方法」という要件の有無は、まず捜査側が判断することであり、起訴され、結果的に裁判所で無罪になったとしても、それ以前の取調べや捜索の対象となりうることだけでも、取材に対する萎縮効果は計り知れない。さらに、「出版又は報道の業務に従事」しない者である一般市民や市民運動家等には適用されず、不合理な差別となっている。さらに、正当業務とされるのは取材のみであり、報道は対象とされていない。取材行為が処罰されなくても報道が処罰対象となれば、報道に十分に配慮するというのが抽象的訓示規定にすぎないこともあわせ、報道の自由に対する萎縮効果が生ずる。(4) 第4に、法案では、国会議員への特定秘密の提供について、行政機関の長は、憲法に規定する秘密会、国会法に規定する両院の委員会秘密会、参議院の調査会秘密会であっても、直ちに特定秘密の提供に応じないとして4つの条件を付けている。すなわち、①当該特定秘密を利用し、又は知る者の範囲を制限すること、②当該業務以外に当該特定秘密が利用されないようにすること、③その他当該特定秘密を知る者がこれを保護するために必要なものとして政令で定める措置を講じ、かつ、④我が国の安全保障に著しい支障を及ぼすおそれがないと認めた場合に限り、特定秘密を提供することができるとしている(10条1項1号)。国会議員への秘密提供は、警察庁長官が都道府県警察に提供する場合(7条)や、行政が外国政府等に提供する場合(9条)よりも明らかに要件が厳しく、さらに行政機関の長の判断ひとつで当該特定秘密を国会に提供しないことがあるというもので、国会が行政をコントロールする議院内閣制の仕組みや国会の最高機関性(憲法第41条)が否定されることになりかねず、国会による行政の監督機能が骨抜きになることを意味する。また、違反には当然罰則が科されることになり、秘密の提供を受けた議員は、所属政党に持ち帰ってこれを検討したり、政策秘書や研究者にこれを知らせて相談することすらできなくなる。これも国会の役割の著しい軽視といえる。(5) 人的管理に特化する法案の問題点 法案の立法の動機は、「高度情報通信ネットワーク社会の発展に伴いその漏えいの危険性が懸念される」こととされているのであり(1条)、情報管理システムの適正化こそが法案の中心になるべきである。しかるに、法案では情報管理システムに関する基本構造や管理ルールなどの規定が全く存在せず、取り扱う者の監視や処罰の強化ばかりを強調する規定内容になっている。
これまでの漏えいの多くは、本来情報を持つ必要のない職員が情報を漏えいしたというものである(ボガチョンコフ事件、尖閣沖映像漏えい事件)。常日頃から、情報は必要な範囲の職員にだけ配布する、関係ない職員からはアクセスすることができないようにするなどの情報管理対策を徹底すれば情報漏えいのリスクを最小限とすることができる。このような適正な情報管理(物的管理)をすれば、現行法の規律の限りで足り、取扱者に対する深刻なプライバシー侵害を伴う適性評価制度や、漏えい等に対する広範かつ重い刑罰によって対処すべきではない。3. よって、当会は、特定秘密保護法が制定されることに強く反対する。
2013年11月9日
山梨県弁護士会会長 東條 正人

生活保護法改正法案の再提出および生活保護費の切り下げに反対する会長声明
第1 生活保護法改正法案の再提出について
1.はじめに
政府は、第183回国会(平成25年常会)において、「生活保護法の一部を改正する法律案」(以下、「改正案」という。)の成立を目指した。改正案は、平成25年6月4日一部修正のうえ衆議院で可決されたが、最終的に同月26日に参議院で廃案となった。しかし、田村憲久厚生労働大臣は、今月開催の臨時国会に改正案を再提出する意向を示している。
2.改正案の問題点
当会は、すでに平成25年6月8日付けで、「生活保護法の一部を改正する法律案」の廃案を求める会長声明を発した。同声明では、憲法25条による生存権保障の趣旨に鑑み、①申請書及び添付書類を要する改正、②扶養義務者への通知・調査に関する改正の2点に看過しがたい問題点があるとして、以下①②のとおり主張した。
①申請書及び添付書類を要する改正案についての問題点
現行生活保護法の生活保護申請に際し、添付書類等を要しないとする取扱いは、生存の危機時における保護が遅れることにより、国民の生命身体に対し取り返しのつかない結果を生じさせかねないという認識に基づく。現に貧困その他の事情により生存を脅かされている状況にある国民に対し、すみやかに最低限度の生活を保障して、生存の危機を回避させることは憲法25条による生存権保障の中核的要素の一つであり、生活保護申請にあたっては、申請の意思表示のみで足り、何らの添付書類も必要とされないという現行生活保護法の取扱いは、この憲法の精神を体現したものである。
ところが改正案では、申請書に必要事項の記載や書類の添付を要する旨が強調されており、記載事項や添付書類の不備に乗じた申請の不受理を招く懸念がある。また、貧困状態にある要保護者に、必要書類の取得や作成といった負担を課すことは、正当な申請を断念させてしまう事態を招きかねない。実際に、生活保護の窓口においては、今でさえ、生活保護申請を事実上受け付けない「水際作戦」と呼ばれる違法な扱いが散見されている。改正案は、かかる「水際作戦」を合法化しようとするものであって、憲法25条による生存権保障の趣旨に反していることは明らかである。
なお、改正案では、「特別の事情があるときは、この限りでない。」とされたが、必要書類の提出が原則であり、「特別な事情」の有無の判断は行政側が行う以上、申請書の不備を理由とした申請拒否の可能性は否定できず、これまで述べた批判が該当する。
②扶養義務者への通知・調査に関する改正案についての問題点
改正案による扶養義務者に対する通知・調査等の制度は、本来生活保護が必要な状況にある国民が、親族間に軋轢が生じることなどを気にして、保護申請を断念してしまうという弊害をもたらす危険性が高い。生活保護制度の受給要件を充たす者のうち、実際に生活保護を利用している者の割合(捕捉率)は、現在2割程度であると言われており、このような制度は、現状においても高いとは言えない捕捉率をさらに低下させる結果となり、一層生活保護の申請を委縮させる危険性がある。
3.生活保護制度の役割
生活保護制度は、生存権保障のための最後のセーフティーネットである。格差と貧困が深刻な社会問題となっているわが国において、餓死・孤立死・自死や貧困を背景とする犯罪や虐待などの悲劇を防ぐために、生活保護など社会保障制度が果たすべき役割はますます拡大している。
改正案は、経済的困窮者を、生活保護の利用からさらに遠ざけるものであり、憲法25条による生存権保障の観点から到底容認できない。
4.よって、当会は、次期国会に改正案を再提出することに対し、強く反対する。
第2 生活保護費の切り下げについて
1. 自民党が選挙公約に掲げた「生活保護給付水準の10%引き下げ」を受けて、厚生労働省は本年8月1日から生活保護費の支給額を切り下げた。今後、2015年4月にかけて3段階に分けて引き下げる予定とされている。その結果、生活に苦しむ全国の生活保護受給者の多くが、行政不服審査法に基づき自治体に審査請求をした。
2. 当会は、すでに平成24年11月9日生活保護の給付基準切り下げに反対する会長声明を発出した。そこでは生存権保障とそれに基づく生活保護の趣旨に基づき、生活保護が最低限の生活を保障するというセーフティーネットであること、わが国の生活保護捕捉率の低さ、それによる餓死者などの存在などから生活保護の切り下げに反対した。
ちなみに、山梨県の被保護世帯数は4079世帯、被保護人員5088人、人口に対する被保護実人員の割合は0.59%にすぎず、47都道府県中41位となっている(厚生労働省,福祉行政報告例(平成23年2月分概数))。
3.ところで、生活保護費の切り下げは、生活保護の問題だけではなく、多くの制度に連動する。「最低賃金」「住民税の非課税」「介護保険料」「公営住宅家賃の減免」「就学支援」などである。収入の少ない世帯は様々な場面で生活保護費切り下げに連動した経済的不利益を甘受せざるを得ない仕組みとなっている。政府は生活保護費切り下げの理由を「物価の下落」としているが、受給者が利用しない比較的高額な家電製品などの物価下落を含むなどの点、また、いわゆるアベノミクスによる輸入原材料の値上がりで、物価はむしろ上昇していると言われる実態と齟齬が生じている。
4.よって、当会は、改めて生活保護費の切り下げに反対するものである。
2013年10月12日
山梨県弁護士会会長 東條正人

憲法第96条の発議要件を緩和する改正に反対する会長声明
声明の趣旨
当会は、憲法第96条を改正して憲法改正手続における国会の発議要件を緩和することに強く反対する。
声明の理由
1.発議要件を緩和しようとする近時の動き
憲法改正の発議要件について、憲法第96条は、「各議院の総議員の3分の2以上の賛成」によるものと定めている。近時、この条項を改正し、発議要件を「過半数の賛成」へと緩和する旨の提案が、自由民主党をはじめ、複数の政党などからなされている。
2.憲法第96条の意義
いうまでもなく、憲法は、国家権力が濫用される危険性を有するものであることに鑑み、国家権力の恣意的な行使から、個人尊重原理に基づく基本的人権を守るため、国家権力を制約する国の基本法である(立憲主義)。
このことは、憲法第11条や第97条が、基本的人権を「侵すことのできない永久の権利」と定めていること、第98条が、基本的人権を守るため、憲法を「国の最高法規」と位置付けていることからも明らかである。
第96条の憲法改正規定は、かかる憲法の最高法規性とあいまって、憲法保障の重要な役割を担うものであり、その時々の政権によって、十分な議論が尽くされないまま安易な改正が行われ、基本的人権の保障が形骸化することのないよう、法律制定よりも厳格な要件を課したものということができる(硬性憲法性)。
3.憲法改正の限界
このように、憲法の本質は、基本的人権の擁護と国家権力の制約という点にある。これを保障するために憲法を国の最高法規と定め、第96条を定めているのであるから、憲法の本質に関連する憲法改正規定自体を改正することは許されないというべきである(憲法学会上の多数説でもある)。
4.諸外国の憲法改正規定との比較
第96条の改正を主張する立場は、現行の発議要件が厳格に過ぎること、そのため、憲法施行後一度も改正が行われず、時代に合わないものとなっていることなどをその論拠としている。
しかしながら、諸外国においては、日本と同程度、あるいはそれ以上に厳格な改正要件を定めながら、数次にわたって改正を行っている国が数多く存在する。
例えば、議員の3分の2以上の議決と必要的国民投票を要求する韓国においては、日本とほぼ同時期である1948年に憲法が制定されて以降、9回の憲法改正が行われているし、国民投票こそないものの、連邦議会の両院の3分の2の賛成による修正の発議と全州の4分の3以上の州議会の賛成が必要とされるアメリカにおいても、1945年以降、6回の修正が行われている。
このように、日本国憲法における改正発議要件が、諸外国に比して厳格に過ぎるなどということはないし、そのために憲法改正が行い得なかった、という関係にもない。
これまでに日本国憲法が改正されなかったのは、多くの国民が改正の必要を認めなかったからと考えられる。仮に、改正が必要と考えるのであれば、国会において3分の2以上の多数意見を形成するための議論や努力をこそ尽くすべきであって、そのような努力もしないままに、発議要件を緩和しようなどというのは、本末転倒も甚だしい。
5.憲法改正手続法の問題点
ましてや、現行の憲法改正手続法によれば、国会による憲法改正発議後、国民投票までの期間は60日以降180日以内と規定されており、このような短期間では、十分な周知、検討、議論及び活動など期待できない。そうすると、慎重かつ充実した議論が尽くされないままに国民投票が行われるといった事態が、多分に予想される。
また、このほかにも、同法には、最低投票率が定められておらず、国民全体の意見が正確に反映されない結果が生じうること、政治活動や言論の自由に対する不当な制限があり、国民に必要な情報が与えられないままに国民投票が行われる危険があるなど、種々の問題点がある。
そのうえ、国会の発議要件まで緩和し、国会においても十分な議論がされないまま発議されることとなれば、極めて安易に憲法が改正され、基本的人権の保障が形骸化する危険はいっそう高まると言わざるを得ない。
過半数によって憲法改正の発議ができることとなれば、その時々の支配層の恣意により、安易に憲法改正がなされるおそれが強く、そのような事態は絶対に避けなければならない。
6.結論
以上のとおり、当会としては、憲法第96条を改正して憲法改正手続における国会の発議要件を緩和することに強く反対の意を表明するものである。
2013年6月8日
山梨県弁護士会会長 東條 正人

「生活保護法の一部を改正する法律案」の廃案を求める会長声明
1. 「生活保護法の一部を改正する法律案」(以下、「改正案」という。)が、6月4日一部修正のうえ衆議院で可決され、現在、参議院で審議中である。
この改正案には、憲法25条による生存権保障の趣旨に鑑み、次の2点において、特に看過しがたい問題がある。
(1) 保護開始申請にあたって、申請書及び指定の添付書類の提出が、義務付けられるようになったこと(改正案24条1項、2項)
(2) 保護実施機関に対し、あらかじめ扶養義務者への通知を義務付け、同機関が、扶養義務者等に報告を求めたり、銀行や雇用主等に対し、各種調査できる権限を付与し、また、官公署等に報告を義務付けていること(改正案24条8項、同28条2項、同29条1項、2項)
2. 申請書及び添付書類を要する改正案の問題点
現行生活保護法の生活保護申請に際し、添付書類等を要しないとする取扱いは、生存の危機時における保護が遅れることにより、国民の生命身体に対し取り返しのつかない結果を生じさせかねないという認識に基づく。現に貧困その他の事情により生存を脅かされている状況にある国民に対し、すみやかに最低限度の生活を保障して、生存の危機を回避させることは憲法25条による生存権保障の中核的要素の一つであり、生活保護申請にあたっては、申請の意思表示のみで足り、何らの添付書類も必要とされないという現行生活保護法の取扱いは、この憲法の精神を体現したものである。
ところが改正案では、申請書に必要事項の記載や書類の添付を要する旨が強調されており、記載事項や添付書類の不備に乗じた申請の不受理を招く懸念がある。また、貧困状態にある要保護者に、必要書類の取得や作成といった負担を課すことは、正当な申請を断念させてしまう事態を招きかねない。実際に、生活保護の窓口においては、今でさえ、生活保護申請を事実上受け付けない「水際作戦」と呼ばれる違法な扱いが散見されている。改正案は、かかる「水際作戦」を合法化しようとするものであって、憲法25条による生存権保障の趣旨に反していることは明らかである。
なお、このような批判を考慮してか、改正案24条1項、2項について、「特別の事情があるときは、この限りでない。」と一部修正されたうえ、参議院に送付されたが、修正後の文言によっても、やはり、必要書類の提出が原則である点で、これまで述べた批判が該当する。
3.扶養義務者への通知・調査に関する改正案の問題点
改正案による扶養義務者に対する通知・調査等の制度は、本来生活保護が必要な状況にある国民が、親族間に軋轢が生じることなどを気にして、保護申請を断念してしまうという弊害をもたらす危険性が高い。生活保護制度の受給要件を充たす者のうち、実際に生活保護を利用している者の割合(捕捉率)は、現在2割程度であると言われており、このような制度は、現状においても高いとは言えない捕捉率をさらに低下させる結果となり、一層生活保護の申請を委縮させる危険性がある。
4. 生活保護制度の役割
生活保護制度は、生存権保障のための最後のセーフティーネットである。格差と貧困が深刻な社会問題となっているわが国において、餓死・孤立死・自死や貧困を背景とする犯罪や虐待などの悲劇を防ぐために、生活保護など社会保障制度が果たすべき役割はますます拡大している。
改正案は、経済的困窮者を、生活保護の利用からさらに遠ざけるものであり、憲法25条による生存権保障の観点から到底容認できない。
5.よって、当会は、改正案について、即時の廃案を求める。
2013年6月8日
山梨県弁護士会会長 東條 正人

生活保護の給付基準切り下げに反対する会長声明
1. 国政などの各方面において、生活保護の給付基準を切り下げる動きが活発化している。平成24年8月10日、社会保障制度改革推進法が成立し、その附則の中で、生活保護の「給付水準の適正化」が明記され、同年8月17日に閣議決定された「平成25年度の概算要求組替え基準について」では、「生活保護の見直しをはじめとして合理化・効率化に最大限取組み、その結果を平成25年予算に反映させるなど、極力圧縮に努める」とされた。
• これらを受け、財務省は同年10月22日、財政制度等審議会に生活保護基準の切り下げに向けた具体的提言を行い、同審議会において、平成25年度の予算編成に向けた生活保護制度の見直しの議論が始められた。
しかし、生活保護の給付基準の切り下げに向けたこれらの動きは、日本国憲法第13条、同25条及びそれを具体化した生活保護法の趣旨から問題視されるべきであるとともに、生活保護受給者の生活実態に照らしても、極めて重大な問題を孕んでいる。
即ち、現在の生活保護基準にしても、生活に余裕のあるような水準ではなく、むしろ生活保護受給者の多くは、十分とは言えない生活扶助費から、食費・被服費・光熱費などをまかない、最低限の日常生活を送ることを余儀なくされているものである。そのような中で、生活保護の給付基準が切り下げられれば、生活保護受給者の生活は、さらに苦境に追い込まれてしまう。これは、生活保護受給者が健康で文化的な最低限度の生活を失うことを意味するものである。
1. また、わが国の生活保護捕捉率(制度の利用資格のある者のうち現に利用できている者が占める割合)は、平成22年4月9日付の厚生労働省の発表によると、所得ベースで15.3%、保有資産を考慮しても32.1%と推計されている(平成19年国民生活基礎調査に基づく)。
生活保護基準未満の低所得世帯のうち約7割が制度を利用していないという事態は、本年に入ってから、札幌市、さいたま市、立川市、南相馬市などで貧困による餓死や孤立死が相次いで発生している事と無関係とは言えない。
このように、現状でも生活保護の捕捉率の低さが問題であるにもかかわらず、合理化による予算圧縮の名の下に、さらに生活保護基準を切り下げ、保護受給者数を抑制するというのであれば、国民の生存権を守るという基本的な義務すら国家が放棄をするというに等しい。
2. さらに、生活保護の給付基準の切り下げは、それによって最低賃金、課税最低限度額、社会保険の自己負担額などにも負の影響を及ぼす危険性が十分に存在し、生活保護受給者を経済的に追い詰めるだけではなく、国民生活全体が貧困のスパイラルに陥る可能性があるという点で、非常に深刻な問題であると捉えなければならない。
3. 山梨県弁護士会は、貧困と格差が拡大・固定化する現代社会の中で、個人の尊厳と生存権の保障という憲法の基本理念を生かし、より豊かな国民生活の実現を願う立場から、生活保護の給付基準の切り下げに反対するものである。
2012年11月13日
山梨県弁護士会会長 清水 毅

「裁判所法の一部を改正する法律」の成立に伴い司法修習生の給費制の復活を求める会長声明
第1 声明の趣旨
司法修習生に対する給費制を復活するための議論を十分に行うため、平成24年7月27日に成立した「裁判所法の一部を改正する法律」に基づき設置される合議制の組織においては、
① 従来の法曹養成フォーラムとは異なる委員を選任すること
② 貸与制が実施されている第65期司法修習生の現状を十分に調査することを強く求める。
第2 声明の理由
1. 平成24年7月27日に裁判所法の一部を改正する法律が成立した。本改正は、昨年11月から実施となった司法修習生に対する修習資金の貸与制を維持することを前提に、経済的困窮者に対しては返済猶予を認めるというものであり、到底賛同することはできない。
法科大学院入学のための適性試験受験者数が平成24年に約5800名にまで減少している中でこのまま貸与制を維持することは、さらに法曹志望者を減少させ、多様な人材の確保がより困難になることは明らかであり、従前実施されてきた司法修習生に対する給費制を復活させるべきである。
2. 他方で上記法律には、閣議決定に基づく合議制の組織(以下「新たな合議制の組織」という。)において、質の高い法曹を養成するための法曹養成制度全体についての検討を加えた結果を一年以内に取りまとめることとし、その検討にあたっては、経済的な事情によって法曹への道を断念する事態を招くことがないようにすること、司法修習生に対する経済的支援については、司法修習生の修習専念義務の在り方等多様な観点から検討し、必要に応じて適切な措置を講じること等の附帯決議が付けられている。
国会の審議においても、給費制の復活を排除するものではないことが確認されており、かかる点は評価しうるものである。
3. しかしながら、新たな合議制の組織において、昨年設置され、実質的に僅か3回の会議で貸与制を是とした法曹養成フォーラムの委員がそのまま委員に選任されたならば、新たな合議制の組織における議論が充実したものになるとは到底考えられない。そもそも法科大学院や大学の関係者は、法曹養成について重大な利害関係を有しており、これらの者を委員に選任すべきではない。新たな合議制の組織においては、法科大学院や大学等の利害関係者を全面的に排除し、 一般市民を含めた多様な意見が反映されるように委員を選任すべきである。
また新たな合議制の組織においては、貸与制が初めて実施され、貸与制による多大な弊害が生じている第65期司法修習生の生の声を聞き、その現状を十分に調査すべきである。
4. 現在、法曹を志望する者にとって原則として法科大学院の修了が要件になるなど経済的負担が大きな障壁になっていることは明らかであり、貸与制の維持はさらに法曹志望者を減少させることにつながるものである。我々は、新たな合議制の組織において、司法修習生に対する給費制を復活するための議論を十分に行うため、声明の趣旨に記載された措置を強く求める。
2012年8月4日
山梨県弁護士会会長 清水 毅

秘密保全法制に反対する総会決議
第1 決議の趣旨
秘密保全法制は、以下に述べるように、立法事実を欠き、国民主権原理から要請される知る権利を侵害するなど、憲法上の諸原理と正面から衝突するものであるから、当会は、秘密保全法制に反対であり、法案が国会に提出されないよう強く求める。
第2 決議の理由
1 はじめに 政府における情報保全に関する検討委員会(以下「検討委員会」という。委員長は内閣官房長官)からの要請を受けて、秘密保全のための法制の在り方に関する有識者会議(以下「有識者会議」という)は、2011年8月8日、「秘密保全のための法制の在り方について(報告書)」(以下「報告書」という)を発表した。そこでは、「国の利益や国民の安全を確保するとともに、政府の秘密保全体制に対する信頼を確保する観点から、政府が保有する特に秘匿を要する情報の漏えいを防止することを目的として、秘密保全法制を早急に整備すべき」ことが提案されている。そして、政府は、この報告書を受けて、秘密保全法の制定に向けて、準備を進めているところである。
2 手続上の瑕疵 しかし、検討委員会、有識者会議とも、議事録が作成されていないばかりか、録音もされておらず、意図的な情報隠しがあったことが明らかになった。各種情報公開法制(中央省庁等改革基本法30条5号等)の趣旨や公文書等の管理に関する法律4条に反するこのような不公正な手続による法制の検討によっては、公正な内容の法案の提出は望めないと言うべきである。
3 立法事実の不存在 報告書は、立法を必要とする理由として、第一に、外国情報機関等の情報収集活動により情報が漏えいしたこと、第二に、政府の保有する情報がネットワーク上に流出したことを挙げている。
しかし、第一に、報告書が指摘する過去の主要な情報漏えい事件等8件について、このうち5件は不起訴となったものであり、その他起訴されたものも国家公務員法その他の現行法によって、十分対応できるものである。第二に、契機になったとされる尖閣諸島漁船衝突事件に係る映像流出についても、この映像自体、国家秘密といえるようなものではなく、映像を流出させた海上保安官も国家公務員法違反につき起訴猶予となって罰せられていない。
以上の点から、有識者会議の報告書は現行法制の不十分さを立証するものではなく、秘密保全法を新たに制定する立法事実は存在しない。
4 「特別秘密」について
(1)規定が過度に広範かつ不明確であること
報告書では、秘密保全法の対象となる「特別秘密」について、国の安全、外交、公共の安全及び秩序の維持の3分野を対象とするとしつつ、特別秘密に該当し得る事項を別表等であらかじめ具体的に列挙した上で、高度の秘匿の必要性が認められる情報に限定するとしている。
しかし、情報を限定する機能は、ないに等しい。公共の安全及び秩序の維持という概念を含む上記3分野をカバーする領域は、過度に広範である上、別表等で予め具体的に列挙するにしても、漏れがないようにするため、別表には、包括的な事項か、網羅的に膨大な情報を列挙せざるを得ない。また、高度の秘匿の必要性についても、要件自体抽象的である。
しかも、報告書によれば、特別秘密の指定権者は、それを作成・取得する行政機関であるとされ、第三者が行政機関の恣意的運用をチェックできる仕組みが、存在しない。
なお、他国の法制上では対象事項とされていない公共の安全及び秩序の維持を対象事項としたことから、たとえば、原子力発電所の安全性や原発事故の原因、放出された放射線の量、健康への影響や環境汚染の実態などの情報が、国民の不安をあおり、公共の秩序を害することを理由に、秘密指定される可能性がある。実際、福島第一原子力発電所事故では、原発敷地内の汚染地図は作られてから1ヶ月以上も公表されず、SPEEDIの拡散予測が公表されたのは5月に入ってからであり、このようなものが特別秘密とされた場合の国民の被害は計り知れない。
(2)国民主権原理及び知る権利を侵害すること
広範かつ不明確な「特別秘密」の名のもと、情報操作、情報隠しがなされかねないことは、主権者たる国民の知る権利、国民主権原理を侵害するものである。
知る権利に関して、報告書は、知る権利の具体化である情報公開法において特別秘密は不開示情報にあたるとか、国及び国民の利益の確保のためには知る権利の制限に合理性が認められるとする。
しかし、まず、現行情報公開法が真に国民の知る権利を保障するものであるか否かが検討されるべきであり、現行情報公開法で保障されているものが、国民の知る権利のすべてではない。むしろ、情報公開法の改正が急務である。
また、何が国及び国民の利益かに争いがあり、特別秘密の外延が不明確であるとき、民主主義の根幹とされる国民の知る権利の制限に合理性が認められるなどとすることはできない。
(3)罪刑法定主義に反すること
報告書は、特別秘密につき、取扱業務者及び業務知得者による故意の漏えい行為、過失の漏えい行為、一般人による特定取得行為、故意の漏えい行為の未遂、共謀、独立教唆行為及び扇動行為を処罰対象とする。
しかし、これらは、以下のとおり、罪刑法定主義に反する。
1.客体である「特別秘密」の定義が前述のように過度に広範かつ不明確である。
2.一般人を処罰対象とする特定取得行為について、報告書は、犯罪行為や犯罪に至らないまでも社会通念上是認できない行為を手段とするもので、適法行為との区別は明確であるから、処罰対象に加えることができるとする。しかし、社会通念上是認できないというのが何を意味するのか、その外延は不明である。
3.共謀、独立教唆、扇動については、いずれも実行行為が行われていない段階での処罰を可能とするものであり、漏えいや特定取得行為を実行した者を処罰する場合以上に、その外延はさらに不明確である。
(4)取材・報道の自由を侵害すること
さらに、特別秘密の漏えい行為や特定取得行為について、その未遂、共謀、独立教唆、扇動までが処罰の対象となることは、取材・報道の自由に対して与える萎縮効果は計り知れず、その結果、民主主義の基盤となる知る権利の侵害にもつながる。
報告書は、正当な取材活動は処罰対象とならないことが判例上確立しているし(いわゆる外務省機密漏えい事件についての最高裁昭和53年5月31日判決)、特定取得行為も「犯罪に該当するか、社会通念上是認できない行為を手段とするもの」に限って処罰対象とするのだから、正当な取材活動を規制するものではないとする。
しかし、前述のように社会通念などという不明確なもので処罰範囲を確定することはできず、正当な取材活動を規制することにつながる。
5 適性評価制度の問題性 報告書は、秘密保全の一環として、適性評価制度を設け、秘密情報を取り扱わせようとする者(以下「対象者」という)について、人定事項、学歴・職歴、我が国の利益を害する活動への関与、外国への渡航歴、犯罪歴、信用状態など多岐にわたる事項を調査の対象としている。さらに、対象者本人への調査ばかりでなく、その関係者、関係団体までも調査の対象とする制度導入も求めている。このような調査制度は、対象者やその関係者のプライバシーや思想・信条の自由を侵すものである。
この点、報告書は、対象者の同意があることを前提としている。しかし、対象者が同意を行うにあたっては、同意の対象となるプライバシー情報の範囲、情報の収集方法が明確であり、さらに自由な意思に基づいて同意したことを要すると考えられるところ、適性評価における調査事項が広範であり、収集方法も十分検討されておらず明確になっていないこと、適性評価の対象者が行政機関等の職員や民間事業者等の従業員といった地位にあることからすれば、任意の同意を確保し得るのかという問題がある。
また、対象者の関係者についての調査は、報告書による限り当該関係者の同意の要否については言及されておらず、さらに問題がある。
第3 むすび
以上の理由から、当会は、秘密保全法制に反対であり、法案が国会に提出されないよう強く求める。
2012年5月22日
山梨県弁護士会

全面的国選付添人制度の実現を求める決議
1 少年に対する弁護士付添人の援助の必要性
弁護士は、少年審判において、付添人として、非行事実の認定や保護処分の必要性の判断が適正に行われるよう、少年の立場から手続に関与し、家庭や学校・職場等少年を取りまく環境の調整を行い、少年の立ち直りを支援する活動を行っている。
少年は、成人に比して未熟であり、えん罪の危険性は大きい。また、少年たちの多くは、家庭で虐待を受け、学校で疎外されるなど、居場所がなく、信頼できる大人に出会えないまま、非行に至っており、少年に対して法的援助をするとともに、少年の成長・発達を支援する弁護士付添人の存在は、極めて重要である。
わが国も1994年5月に批准した子どもの権利条約は、「自由を奪われたすべての児童は、弁護人その他適当な援助を行う者と速やかに接触する権利を有」する(37条(d))、「刑法を犯したと申し立てられ又は訴追されたすべての児童は」、「防御の準備及び申立てにおいて弁護人その他適当な援助を行う者を持つこと」、「法律に基づく公正な審理において、弁護人その他適当な援助を行う者の立会い・・・の下に遅滞なく決定されること」について保障を受ける(40条2項(b)(ⅱ)(ⅲ))と規定している。
さらに、国連子どもの権利委員会は、2010年6月、日本政府の第3回政府報告書審査に基づく最終見解において、少年司法に関し、「すべての児童が手続のあらゆる段階で法的及びその他の支援を受けられることを確保すること」(パラグラフ85(d))と勧告している。このように、少なくとも身体拘束を受けた少年に対して弁護士の法的援助を実質的に確保することは、国際的にも求められている。
しかしながら、多くの少年やその保護者には、弁護士付添人の費用を負担する資力がなく、仮に保護者に資力があったとしても、少年のために費用を支出することには消極的な場合がほとんどであって、少年が弁護士付添人の援助を受ける権利を実質的に保障するためには、国選付添人制度が必要である。
2 現行国選付添人制度拡大の必要性
資力のない少年に弁護士付添人の援助を受ける権利を実質的に保障するためには、国費でこれを付する制度が不可欠であるが、2007年に導入された現行の国選付添人制度は、その対象事件を殺人、強盗等の重大事件に限定しており、しかも、裁判所が必要と認めた場合にのみ裁量で付する制度にとどまっている。このため、家庭裁判所の審判に付され、観護措置決定により少年鑑別所に身体拘束された少年は、11、241人に上るのに対し、国選付添人が選任された少年は、わずか516人(約4.6%)にすぎない(2009年)。
しかしながら、少年鑑別所に収容された少年については、刑事処分を相当とする検察官送致や少年院送致、児童自立支援施設送致等の収容をともなう保護処分といった重大な処分となる可能性が高く、適正な処分の選択や少年の納得という観点からも、弁護士付添人の援助が必要であり、弁護士による援助の必要性は罪名で区別することはできない。
さらに、2009年5月21日以降、被疑者国選弁護制度の対象事件が、いわゆる必要的弁護事件にまで拡大されたが、国選付添人制度の対象事件は限定されたままであるため、多くの事件で被疑者段階で選任された国選弁護人が、家庭裁判所送致後には国選付添人として活動することができないという事態が生じている。
被疑者国選弁護人は、家庭裁判所での少年審判を見据えて少年に働きかけを行ったり、被害者と示談交渉をするなどの弁護活動を行っているのであり、少年が私選で選任しない限り、家庭裁判所送致後に付添人として活動することができないというのは大きな制度的矛盾である。
したがって、国選付添人制度の対象事件を拡大することは喫緊の課題である。
3 当会及び全国の弁護士会の取組み
資力のない少年に弁護士付添人の援助を実質的に保障するためには弁護士費用の援助が不可欠であるが、国選付添人制度は極めて限定的なものであり、当会を含む全国の弁護士会は、このような事態を放置できないことから、身体拘束を受けたすべての少年に対して弁護士付添人の援助を受ける権利を保障するべく、少年が希望すれば無料で弁護士が面会する当番付添人制度を全国で実施している。また、日弁連は、2009年6月以降、すべての会員から特別会費を徴収して少年・刑事財政基金を創設し、同基金を財源として弁護士費用を援助する少年保護事件付添援助制度を拡充しており、同制度による少年保護事件の援助件数は、2009年度で6914件にのぼっている。
4 全面的国選付添人制度の実現を
上記のとおり、全国で身体拘束を受けた少年のすべてを対象とした全面的国選付添人制度への対応態勢は確立されている。
現在、弁護士付添人のほとんどは、少年保護事件付添援助制度を利用したものであるが、援助制度は、あくまでも、全面的国選付添人制度実現までの暫定的な措置であって、上記のような少年にとっての弁護士付添人による援助の重要性に照らせば、本来、国費によって付するべきものである。
よって、当会は、政府及び国会に対して、速やかに、国選付添人制度の対象事件を少年鑑別所送致の観護措置決定により身体拘束された少年の事件全件にまで拡大する少年法改正を行うことを求める。
2011年5月13日
山梨県弁護士会

各人権条約に基づく個人通報制度の早期導入及び パリ原則に準拠した政府から独立した国内人権機関の設置を求める決議
当弁護士会は、わが国における人権保障を推進し、国際人権基準の実施を確保するため、2008年の国際人権(自由権)規約委員会の総括所見をはじめとする各条約機関からの相次ぐ勧告をふまえ、国際人権(自由権)規約をはじめとした各人権条約に定める個人通報制度の導入及び国連の「国内人権機関の地位に関する原則(パリ原則)」に合致した、真に政府から独立した国内人権機関の設置を政府及び国会に対して強く求める。以上のとおり平成22年度定期総会において決議する。
提案理由
1 個人通報制度について
個人通報制度とは、人権条約の人権保障条項に規定された人権が侵害されているにも拘わらず、国内での法的手続を尽くしてもなお人権救済が実現しない場合、被害者個人等が各人権条約の定める国際機関に通報し、救済を求める制度である。この個人通報制度を実現するためには、各条約の人権保障条項について個人通報制度を定めている選択議定書等を批准するなどの手続が必要である。
残念ながら、日本の裁判所は、人権保障条項の適用について積極的とはいえず、民事訴訟法の定める上告の理由には国際条約違反が含まれず、国際人権基準の国内実施が極めて不十分となっている。そのため、各人権条約における個人通報制度が日本で実現すれば、被害者個人が各人権条約上の委員会に見解・勧告等を直接求めることが可能となり、日本の裁判所も国際的な条約解釈に目を向けざるを得ず、その結果として、日本における人権保障水準が国際基準にまで前進し、また憲法の人権条項の解釈が前進するなどの著しい向上が期待される。
2 国内人権機関の設置について
国連決議及び人権諸条約機関は、国際人権条約及び憲法などで保障される人権が侵害され、その回復が求められる場合には、司法手続よりも簡便で迅速な救済を図ることができる国内人権機関を設置するよう求めており、多数の国が既にこれを設けている。
国内人権機関を設置する場合、1993年12月の国連総会決議「国内人権機関の地位に関する原則」(いわゆる「パリ原則」)に沿ったものである必要がある。具体的には、法律に基づいて設置されること、権限行使の独立性が保障されていること、委員及び職員の人事並びに財政等においても独立性を保障されていること、調査権限及び政策提言機能を持つことが必要とされている。
日本に対しては、国連人権理事会、人権高等弁務官等の国連人権諸機関や人権諸条約機関の各政府報告書審査の際に、早期にパリ原則に合致した国内人権機関を設置すべきとの勧告がなされており、また、国内の人権NGOからも国内人権機関設置の要望が高まっている。
現在、わが国には法務省人権擁護局の人権擁護委員制度があるが、独立性等の点からも極めて不十分な制度である。
このような状況の中で、日本弁護士連合会は、2008年11月18日、パリ原則を基準とした「日弁連の提案する国内人権機関の制度要綱」を発表した。
さらに、2010年6月22日には、法務省政務三役が「新たな人権救済機関の設置に関する中間報告」において、パリ原則に則った国内人権機関の設置に向けた検討を発表するなど、国内人権機関設置に向けた機運は高まってきている。
3 当弁護士会は、わが国における人権保障を推進し、また国際人権基準を日本において完全実施するための人権保障システムを確立するため、国際人権(自由権)規約をはじめとした各人権条約に定める個人通報制度を一日も早く採用し、パリ原則に合致した真に政府から独立した国内人権機関をすみやかに設置することを政府及び国会に対して強く求めるものである。
2011年2月25日
山梨県弁護士会

「都留ひまわり基金法律事務所」開設にあたって
本日、都留市に「都留ひまわり基金法律事務所」が開設されました。
「都留ひまわり基金法律事務所」は、当会、日本弁護士連合会及び関東弁護士会連合会の支援のもとに開設されたものですので、その理由と経過についてご説明させて頂き、「都留ひまわり基金法律事務所」に対するご理解とご協力をお願いしたいと存じます。
山梨県は、国中地方と郡内地方の二つに分かれますが、甲府地方裁判所・甲府家庭裁判所にも、本庁の他に都留支部があり、都留支部の管轄区域が郡内地方となっています。
その人口も、国中地方が約68万人、郡内地方が約19万人(山梨県全体で約87万人)となっています。
ところが、各地方に事務所を置く弁護士の数を見ますと、甲府に76人いるのに対し、都留支部管内には、これまでわずか1人しかいませんでした。
甲府に事務所を構える弁護士が都留までは車で1時間程度で足を運べる環境ではありますが、郡内地域の市民にとっては、自らの権利について、弁護士に 相談するにも、依頼するにも、甲府(または東京都や静岡県)まで行かなければならず、特に自動車を運転しない市民にとっては、とても不便な状況が続いてき ました。
当会では、1997年(平成9年)から、大月市に非常駐の東部富士五湖法律相談センターを開設し、現在では毎週1日、会員が交代で赴いて、法律相談をしています。 しかし、それだけでは、郡内地域の市民にとっては、弁護士が身近にいるとは言えませんでした。
そこで、当会では、昨年度、日弁連に対し、「ひまわり基金」(当会会員を含む全国の日弁連会員が特別会費として月額1400円、年間合計約4億円を 積立てている基金)の援助による「ひまわり基金法律事務所」を都留市に設置することを求めることとなり、その後、日弁連及び関弁連との間で協定を締結し、 「都留ひまわり基金法律事務所」の設置が決まりました。
その決定を受けて、「都留ひまわり基金法律事務所」に赴任する弁護士を全国から公募したところ、第二東京弁護士会所属の倉内信崇弁護士の応募を得て、当会、日弁連及び関弁連の三者からの委員で構成した支援委員会による選定を経て、同弁護士が決定し、同弁護士が決定し、この9月1日、当会に入会する と同時に「都留ひまわり基金法律事務所」が開設されたものです。このように「都留ひまわり基金法律事務所」開設の目的・使命は、郡内地域の住民に対して身近な弁護士による法的サービスを提供することにありますの で、この「都留ひまわり基金法律事務所」の存在が郡内地域の住民の方々に広く知られ、これまで弁護士に会うことが不便なために弁護士に相談することをあき らめていたような多くの住民の方が、この事務所を利用して頂き、この事務所の使命を果たすことができるよう願っております。
また、この「都留ひまわり基金法律事務所」が成功すれば、郡内地域で開業することに不安を抱いて躊躇していたような弁護士が一般の法律事務所を開設する可能性が高くなります。 この「都留ひまわり基金法律事務所」がいわば呼び水となって、富士吉田市、大月市、上野原市など郡内地域の各地に新しい法律事務所が開設され、郡内地域の住民に対する法的サービスが充実することが理想です。 そのためにも、まずは「都留ひまわり基金法律事務所」がその使命を立派に果たすことができるよう、皆様のご理解とご協力をお願い申し上げます。
2008年9月1日
山梨県弁護士会会長 石川 善一