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2342 どんたく滋賀弁護士会①

消費者被害と民法の成年年齢の引下げに関する会長声明
ttp://www.shigaben.or.jp/chairman_statement/20160711.html
選挙権年齢を20歳以上から18歳以上に引き下げる「公職選挙法等の一部を改正する法律」が本年6月19日から施行され、政府において、民法の成年年齢を20歳から18歳へ引き下げることが議論されている。
しかし、公職選挙法の選挙権年齢と民法の成年年齢とは同列に論じられるものではなく、民法の成年年齢の引下げは、若年者に対する消費者被害を拡大させるおそれが高いので、当会は、現時点において、民法の成年年齢を18歳に引き下げることに反対する。
民法の成年年齢を引き下げた場合における最も大きな問題は、18歳、19歳の若年者が未成年者取消権(民法5条2項)を喪失することである。
民法において、これら若年者を含む未成年者は、単独で行った法律行為を未成年者であることのみを理由として取り消すことができる。このため、未成年者が違法もしくは不当な契約を締結させられた場合、未成年者取消権によってその者を救済できることを多くの弁護士が日常業務において経験しているところである。また、消費生活センター等に寄せられる相談において未成年者取消権を失う20歳になると相談件数が急増していることは、未成年者取消権が未成年者に違法もしくは不当な契約の締結を勧誘する悪質な事業者に対する抑止力として機能していることを示している。
国民生活センター発行の消費生活年報によれば、20歳未満の未成年者に対する携帯電話端末等を経由した消費者被害が多数報告されており、成年年齢の引下げによって18歳、19歳の若年者の未成年者取消権が失われると、被害に遭った同若年者の救済が困難になるほか、悪質な事業者に対する抑止力の範囲が狭まることによって、同若年者に対する消費者被害がさらに拡大するおそれが高い。特に、人口に占める大学生の比率が日本で3番目に高い滋賀県においては、民法の成年年齢の引下げによって、県下の消費者被害が増加する危険性がある。
また、18歳、19歳の若年者に対する消費者被害を防ぐためには、同若年者に対する消費者教育を行き届かせる必要があるところ、「消費者教育の推進に関する法律」が施行されてから数年しか経過しておらず、また、同若年者に対する消費者教育の効果が客観的データをもとに検証されていない現時点においては、同若年者に対する消費者教育が行き届いていると評価することもできない。
さらに、民法の成年年齢の引下げは、他の多くの関連法の改正に影響するため、若年者とその者を取り巻く多くの関係者(親、教育関係者、行政関係者等)の意見を聴いて、その是非が判断されるべきであるところ、現時点において、これら関係者の間で十分な議論がなされているとは言えず、また全国紙新聞社による全国世論調査(2015年10月3日付読売新聞)においても成年年齢の引下げについて「反対」が53%を占めるなど、同引下げについて国民的合意が成立しているとも言えない。
選挙権年齢の引下げは18歳、19歳の若年者に権利を付与するものであるのに対し、民法の成年年齢の引下げは同若年者に私法上の行為能力を付与する反面、未成年者取消権を喪失させるものであって、同列に論じられるものではない(実際、成年被後見人は行為能力が制限されるが、選挙権は認められている)。昨日の参議院議員選挙の投票に見られるように18歳、19歳の若年者に早期の社会参加を促す等の要請があるとしても、同若年者を含む未成年者を取り巻く消費者被害の現状に鑑みれば、民法の成年年齢の引下げは、未成年者取消権の行使範囲を縮小させ、同若年者に対する消費者被害を拡大するおそれが高いものである。
以上のとおり、民法の成年年齢の引下げは、18歳、19歳の若年者に対する消費者被害を拡大するおそれが高いので、当会は、現時点において、民法の成年年齢を18歳に引き下げることに反対する。
2016(平成28)年7月11日
滋賀弁護士会 会長 野嶋直

いわゆる共謀罪法案の提出に反対する会長声明
ttp://www.shigaben.or.jp/chairman_statement/20161122.html
1.政府は、過去3度廃案となった共謀罪創設規定を含む法案(以下「旧法案」という。)について、いわゆる「共謀罪」を「テロ等組織犯罪準備罪」と名称を改めたうえで、これを新設する組織犯罪処罰法改正案(以下「新法案」という。)を国会に提出することを検討していると報じられている。
当会は、共謀罪が外形的行為のない意思を処罰しないとする刑法の基本原則に反するほか、共謀罪の新設により思想信条の自由、表現の自由、集会・結社の自由等の憲法上の基本的人権が重大な脅威にさらされることから、過去、共謀罪の新設に反対する会長声明を出している。
2.報道によると、新法案は、処罰対象を旧法案の「共謀」にかえて「(犯罪の)遂行を2人以上で計画した者」へ変更している。しかし、そもそも「計画」という刑法上の概念が不明確であるうえ、「計画」と「共謀」は「犯罪の合意」と同義であって、両者は実質的に何ら変わることはない。
また、新法案は、「犯罪の実行の準備行為」を新たな要件として付加している。しかし、「準備行為」は、いわゆる予備罪・準備罪における予備・準備行為と異なり、当該行為自体の危険性を要さないため、例えばATMにおける預金の引出し行為など日常的な生活活動も広く「準備行為」とされかねず、恣意的な解釈により処罰される行為の範囲が拡大されうるなど、処罰範囲の不明確性という旧法案の危険性は変わっていない。
さらに、新法案は、適用対象を単に「団体」ではなく、「目的が長期4年以上の懲役・禁錮の罪を実行することにある団体(組織的犯罪集団)」としている。しかし、その認定は捜査機関の判断と運用に委ねられることもあり、本来は犯罪の実行を目的としていない団体の一部の構成員が一定の犯罪の共謀を行ったことをもって当該団体が組織的犯罪集団と認定されうるなど、適用対象が拡大する危険性が高く、適用対象の不明確性という旧法案の危険性も解消されていない。
なお、新法案において「組織的犯罪集団」の目的とされる犯罪は、テロとは全く関係ない犯罪を含め、旧法案と同様に600以上にもわたる。今般の刑事訴訟法改正に盛り込まれた通信傍受制度の拡大に新法案が加わったときには、テロ対策の名の下に市民の会話が監視・盗聴され、市民の表現活動等が大幅に萎縮するなど、市民社会のあり方が大きく変わるおそれさえある。
3.以上のとおり、テロ等組織犯罪準備罪は、旧法案における共謀罪と同様の危険がある。よって、当会は、政府がテロ等組織犯罪準備罪を新設する新法案を国会へ提出することに反対する。
2016(平成28)年11月22日
滋賀弁護士会 会長 野嶋直

朝鮮学校に対する適切な補助金の交付を求める会長声明
ttp://www.shigaben.or.jp/chairman_statement/20161124.html
1.文部科学大臣は、本年3月29日、朝鮮学校を認可している28都道府県の知事に対し、「朝鮮学校にかかる補助金交付に関する留意点について(通知)」を発出した。同通知は、朝鮮学校に関し、「北朝鮮と密接な関係を有する団体である朝鮮総聯が、その教育を重要視し、教育内容、人事及び財政に影響を及ぼしている」という政府の認識を示したうえで、前記の各知事に対し、朝鮮学校への補助金交付について、「補助金の公益性、教育振興上の効果等に関する十分な御検討と補助金の趣旨・目的に沿った適正かつ透明性のある執行の確保」を求めている。
同通知は、具体的な事実関係を指摘することなく前記のような政府の認識だけを根拠に、数多くある各種外国人学校のなかの朝鮮学校のみを対象として、事実上、補助金の交付を停止するよう求めたものといえる。現に、いくつかの地方自治体においては、同通知を踏まえ、補助金の交付を停止する動きがあると報道されており、このような流れが今後も続くことが強く懸念される。
2.朝鮮学校に通学する子どもたちも、他の学校に通う子どもたちと同様、一個の人間として、また、一市民として、成長、発達し、自己の人格を完成、実現するために必要な学習をする固有の権利である学習権(憲法26条1項、同13条)が保障されている。にもかかわらず、子どもたちとは何らの関係がない外交問題・政治問題により朝鮮学校への補助金の交付が停止することは、朝鮮学校に通学する子どもたちの学習権を侵害するものである。
また、朝鮮学校に通う子どもたちが、合理的な理由なく他の学校に通う子どもたちと異なる不利益な取扱いを受けることは、平等原則(憲法14条1項、国際人権(自由権)規約26条、国際人権(社会権)規約2条2項)にも反する。
さらに、前記通知による補助金の交付の停止等は、朝鮮学校に通う子どもたちに社会からの疎外感を与えるとともに、その子どもたちへの不当な差別を助長する可能性があり、この点からも容認することができない。
3.よって、当会は、文部科学大臣に対し、上記通知を撤回するよう求めるとともに、滋賀県及び大津市に対し、朝鮮学校に対する補助金について憲法及び人権規約等の趣旨に照らして適切に交付されるよう求める。
2016(平成28)年11月24日
滋賀弁護士会 会長 野嶋直

いわゆる共謀罪の創設を含む改正組織的犯罪処罰法の成立に関する会長声明
ttp://www.shigaben.or.jp/chairman_statement/20170623.html
2017(平成29)年6月15日、いわゆる共謀罪の創設を含む組織的犯罪処罰法改正案(以下「本法案」という。)について、参議院本会議において、参議院法務委員会の中間報告がなされた上で、同委員会の採決が省略されるという異例な手続きにより、本会議の採決が行われ、成立した。
当会は、本法案の適用範囲や処罰範囲が不明確で恣意的な解釈により処罰される行為の範囲が拡大する恐れがある、また、市民生活が監視され正当な表現活動まで大幅に萎縮する恐れがあるなどとして、一貫してこれに反対してきた。
政府による本法案の説明が不十分である、あるいは本国会での成立を見合わせるべきとの複数の世論調査の結果が出ているなかで、衆議院法務委員会において採決が強行され、また、参議院においては上記の通りの異例な手続きを経て、本法案が成立に至ったことは極めて遺憾である。
当会は、日本弁護士連合会、各弁護士会連合会、全国の各弁護士会とともに、本法律が恣意的に運用されることがないように注視するとともに、今後、成立した本法律の廃止に向けた取り組みを行う所存である。
2017(平成29)年6月23日
滋賀弁護士会 会長 佐口裕之

死刑執行に対する会長声明
ttp://shigaben.or.jp/chairman_statement/20170810.html
本年7月13日、大阪拘置所において1名、広島拘置所において1名、計2名の死刑が執行された。第2次安倍内閣において11回目(計19名)、金田勝年前法務大臣に就任中においては昨年11月以来2回目の執行であった。
今回執行されたうち、1名については再審請求を行っている中での死刑執行であり、他1名については第一審において死刑判決が下され、弁護人が控訴したが自ら控訴を取り下げ死刑判決が確定したうえでの死刑執行である。
刑事司法が、誤判のおそれと隣り合わせにあること、誤判の中には全くのえん罪のみならず、量刑を左右する重要な事実についての事実誤認も含まれること、死刑の犯罪抑止効果に疑問があること、国連から再三にわたって死刑廃止の勧告を受けていることなどを考え、当会は、昨年9月27日に開催された臨時総会において、死刑制度は廃止されるべきであるとの立場を明らかにしたところである。日本弁護士連合会も、死刑制度の重大な問題性や国際的な死刑廃止への潮流に鑑み、昨年10月7日に開催された人権擁護大会において、死刑制度の廃止を含む刑罰制度全体の改革を求める宣言を採択したところである。
上記決議や宣言等に反してなされた死刑執行は、当会として到底容認することができない。
また、我が国の刑事訴訟制度は、死刑が問題となる事件についても、裁判官(裁判員)の全員一致性、自動上訴制度、再審請求に対する国選弁護制度といった、特別な手続きが用意されておらず、生命剥奪という究極の刑罰に対する手続保障が不十分である。その点でも、今回の死刑を執行した法務大臣の判断は批判を免れない。
当会は、日本弁護士連合会とともに、政府に対し、国民の議論を深めるため、執行対象者の選定基準、手続き、執行方法など死刑に関する詳細な情報を公開すること、仮釈放の要件を加重した重無期刑の導入など、死刑制度の廃止を含む刑罰制度全体を改革すること、上記のとおり死刑が問題となる事件における手続保障を充実させること、これらが実現するまでの間、死刑確定者に対する死刑の執行を停止する旨の時限立法(死刑執行停止法)を制定するなどして死刑の執行を停止することを改めて要望するものである。
2017(平成29)年8月10日
滋賀弁護士会 会長 佐口裕之

死刑の執行に抗議し、死刑制度の廃止を求める会長声明
ttp://www.shigagen.or.jp/chairman_statement/20180119.html
2017(平成29)年12月19日、2名に対して死刑が執行された。第2次安倍内閣発足以降、死刑の執行は12回目、21名が執行されたことになる。今回の2名は、いずれも弁護人が付いて再審を請求している中での執行であった。
当会は、2016(平成28年)年9月の臨時総会において「死刑廃止を求める決議」を採択した。また、日本弁護士連合会も、同年10月の人権擁護大会において、「死刑制度の廃止を含む刑罰制度全体の改革を求める宣言」を採択している。
死刑を行うということは、この世に生きる値打ちのない生命があるということを国家が正面から宣言することにほかならない。私たちが目指すべきは、罪を犯した人の更生の道を完全に閉ざすことなく、すべての人が尊厳を持って共生できる社会である。
刑事司法は常に誤判の危険と隣り合わせにある。犯人性を誤って認定するという全くのえん罪事件のみならず、量刑に影響を及ぼす事情についての誤認によって、死刑か無期懲役かの判断を誤るおそれもある。いかなる裁判制度においても、このような誤判のリスクを完全になくすことはできない。まして、現在の日本の刑事裁判制度においては、死刑が問題となる件についても、裁判官(裁判員)の全員一致性、自動上訴制度、再審請求に対する国選弁護制度といった、特別な手続きも用意されていない。誤判によって死刑に処せられる危険性を払拭できない以上、そのことだけでも死刑制度を維持することは正当化できない。
死刑制度に関しては、被害者遺族の感情を根拠にその必要性が語られることが少なくない。もとより、犯罪により身内を無くされた被害者遺族の方が厳罰を望むことはごく自然なことであり、その心情は十分に理解できる。しかし、刑罰制度の根拠は、犯罪被害者や遺族の報復感情に尽きるものではなく、刑種の選択と量刑の決定にあたり、犯罪被害者や遺族の感情を考慮するのは当然としても、それのみを決定的な要素とすることはできない。死刑制度の廃止は、刑罰制度全体を見直し、犯罪被害者や遺族に対する支援と並行して進めていくべきものであり、犯罪被害者や遺族の支援と矛盾するものではない。
今回執行されたうちの1名は犯行当時少年であった。少年による犯罪は、成育環境の影響が非常に強いものであり、少年に全責任を負わせて死刑にすることには大きな問題がある。
このほか、死刑に犯罪抑止効果があるか疑問であること、死刑廃止が世界的な潮流であり、日本もこれまでに再三にわたって国連から死刑廃止を前向きに検討するべきであるとの勧告を受け続けていることなど、死刑制度を維持すべきでない状況がある。
当会は、今回の死刑執行に対し強く抗議するとともに、直ちに死刑執行を停止した上で、死刑に関する詳細な情報を公開し、死刑制度の廃止について全社会的議論を深め、日本において国連犯罪防止刑事司法会議が開催される2020年までに、死刑制度を廃止することを求めるものである。
2018(平成30)年1月19日
滋賀弁護士会 会長 佐口裕之